上島竜兵さんの自宅前中継に安倍首相死去のツイート
テレビ局はよく、遺族感情に配慮する、ということを掲げるが、果たして水木さんの際の取材姿勢に、その思いはあったのか。
「著名人や有名人の死亡を伝えることは、メディアは使命だと思って来た節がある。確かに政治家の死去を伝えることにはメディアの社会的責任だとは思いますが、芸能人や有名人となると、ちょっと違うふうにとらえる必要がある時代になって来た、ということでしょうね。
コロナ禍で家族葬が増え、弔問客へのあいさつをせずに、故人とゆっくりお別れできるようになった。それを取材者が踏みにじることはあってはならない。遺族が望まない段階で報じることがいいことなのか、冷静に考えるべきでしょうね」(一般紙デジタル担当記者)
昨年、上島竜兵さんが亡くなった際、テレビ朝日とフジテレビの情報番組が上島さんの“自宅前から中継”をして批判が続出した。
安倍晋三首相が亡くなった日には、正式な発表がある前に、確かな情報筋から聞いた、として元テレビ局報道記者が、その死をツイッターでつぶやいたことがあった。あってはならぬことで、その記者は誤報だと認めたが、人の死に誤報があっていいはずはない。
政治家の死になれば、政治権力の移譲もあるため、その準備が整ってから明らかにすることもある。大平正芳元首相が急死した際、病院の廊下(その頃は、廊下でも取材ができた)にいる新聞記者に気づかれないように、時間稼ぎのため、亡くなった大平さんの病床で家族があえて笑いごとを上げたり、大声で話したことがあったという。関係者からそう聞いたことがある。
例え有名な芸能人や文化人であっても、人の死は故人のものであり、家族のものである。故人の遺志や家族の意志を無視した報道は、もはや時代にそぐわない。