最強のインフラ使用で進化する注文方法
こういった声について、都内で居酒屋を営む男性は、
「うちは20人入ればいっぱいの店ですが、QRオーダーを導入してから、フロアスタッフを3人から2人に減らしても回していけるようになりました。
バイトを雇おうにも簡単には来てくれない今、本当に助かっています。でも、スマホを持たないガラケーのお客さまだと、以前と同じようにオーダーを紙に書いて、お会計の際に計算することが必要になります。
困るのは、レジ打ちの研修を受けていないスタッフもいるので、紙で精算するお客さまを会計時にお待たせしてしまうケースが出ることです」
売り上げ計算をするときも、アナログとデジタルの伝票が混在すると、管理しづらくなることも。結局は人員が必要になる場面も出てくるのだ。
また、地下の店舗で店側のWi―Fiにつながないと通信障害が起こる、スマホのバッテリーがギリギリで余計なことにスマホを使いたくない、などといった根本的な問題も─。ただ、このQRオーダーも始まったばかりの“黎明期”。利用客側も慣れてくれば、少しずつ問題は解決していくのでは、と坂口さん。
「ガラケー利用者がこれから増えることはないと思いますし、逆にスマホ利用者が減少することはまずないでしょう。いろいろな人が言っているように、iPhoneやAndroidが今や最強のインフラになっています。それを使って効率化を図ることは当然なこと。現在の技術が天井ではなく、これからも進化していくでしょう。
小売店の在庫管理などでは、ワンオペで店を回すため、どこの棚の商品が欠品しているということを知らせるシステムも開発されています。このような技術も、オーダーシステムの中で進化していくのでは」
少し先の話かもしれないけれど、と坂口さんは最後にこんな“未来予想図”を話してくれた。
「画像を解析して指示を出せるような、AIカメラが登場すれば、客のグラスが空いているのをカメラで確認して“おかわりはいかがですか”“オススメはこちらになります”など、客のオーダーした傾向から、料理や飲み物をすすめてくる──。そんなシステムが導入される未来が来るかもしれませんね」
ひと昔前なら夢物語のような話。しかし、現実には大手ファミリーレストランなどでは、配膳ロボットが各テーブルに料理などを運んでおり、人間がやっていた仕事を、かなりの部分で担うようになってもいる。
コスト的には削減となり、企業からすればいいことずくめなのかもしれない。だが、人と人とのコミュニケーションから生まれる“おもてなし”の気持ちは、どんな形に変わっていくのだろうか──。
取材・文/蒔田 稔