いつの時代も求められるヒールキャラ

 実際、「嫌い」部門を見ていくと、3位が和田アキ子、4位が坂上忍、5位が宮根誠司というように、「このメンバーの中に交ざったら」と想像するだけで、息が詰まりそうになる……。

「アッコさんは、いつも上から目線なのが好きになれない」(広島県48歳)

「坂上さんは、意見が合わない人には露骨にイヤな態度に出ることがあったから」(京都府44歳)

「テレビで見ていて不快なほど宮根さんはパワハラ感がある」(大阪府36歳)

パワハラ感があるとして坂上と宮根が4位と5位に
パワハラ感があるとして坂上と宮根が4位と5位に
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 視聴者から届いたコメントも手厳しいものばかりで、パワハラ感がある毒舌に対しては不快感をあらわにする視聴者が多いもようだ。6位に選ばれた爆笑問題・太田光と、7位のとろサーモン・久保田かずのぶに対しては、「自分勝手すぎる。人への配慮が足らない」という意見が大多数だった。

 とはいえ、「いつの時代もヒール(悪役)キャラは必要」と大野さんは補説する。

「過去には、『快傑熟女!心配ご無用』や『マネーの虎』といった上から目線でズバズバと物を言う番組が人気を博していた。誰かが叱られている、ダメ出しをされているという光景が、コンテンツとして成立していた時代があった」

 しかし、コンプライアンスという言葉が叫ばれるようになり、いつしか説教はパワハラとして解釈されるようになっていく。そうした時代の変化もあり、説教のイメージが強い毒舌キャラは、「嫌い」に属することがこのランキングからも見て取れるだろう。

「今の時代は、説教に合理的根拠がなければ、コンテンツとして成立しないように感じます。一流料理人が、経験や根拠に基づいて商品にダメ出しをする『ジョブチューン』(TBS系)を想像するとわかりやすい。彼らは技術的な背景があるからこそ物申せるし、私たちも納得する」(大野さん)

 裏を返せば、感情ありきで毒を放つのは、少なくとも視聴者の反感を買ってしまうということだ。説教が説教に映らないように、オブラートに包んでダメ出しや反論をすることが求められる。それゆえ、「ひろゆきさんや成田悠輔さんにスポットライトが当たるのでは」とも大野さんは付言する。

配信するひろゆき氏(YouTubeより)
配信するひろゆき氏(YouTubeより)

 たしかに、彼らが論破する様は、『快傑熟女!心配ご無用』でご意見番たちが一般女性に放言していた姿と変わらない気が─。大野さんが指摘するように、「いつの時代もヒールキャラは必要」なのだ。

「年々コンプライアンスが厳しくなっているため、ますます大胆なことは言えなくなっていくでしょう。でも、それでは面白くならないから、テレビマンは“ズバッと言える”“物おじしないで言える”といった毒舌キャラを求める。それは今後も変わらないと思います」(大野さん)

 そのうえで、大野さんはこう締めくくる。

「2つのランキングを見比べると、「嫌い」に選ばれている方々は、自身の“弱さ”を見せない人が多くいる印象です。一方、「好き」を見ると、マツコさんや有吉さんなどコンプレックスを隠そうとしない人が多い。

 弱さやコンプレックスを打ち明けられる人というのは、皆さんから共感を集めやすいし、愛のある毒になりやすい。他者に寄り添えるか否かも大きなポイントではないでしょうか」

 ウエストランドの毒舌漫才は強烈なインパクトで迎え入れられた。はたしてウエストランドは、「好き」と「嫌い」、どちらに向かっていくのか。願わくば、「舌は禍(わざわい)の根」にならないように──。