秘書が「音声を録音」自己防衛する時代
秘書の世界はそんなにバチバチしていない……かと思ったら、“議員対秘書”の構図は確かに存在するという。
「週刊誌に自分が仕える議員のパワハラや不正を告発して、大きな騒動になることはしばしばありますね。秘書が音声を録音して自己防衛するのも当然の時代です」(有馬氏)
音声の録音といえば、代表的だったのは元衆議院議員の豊田真由子氏だろう。秘書に対して激高する様子が週刊誌に報じられたことで、離党に追い込まれた。
ドラマでも、草なぎが週刊誌の記者と組んで証拠をつかみ、敵を追いやるというシーンはたびたび描かれている。
「週刊誌を読むと“この情報は秘書から出てるな”って記事がよくあるんですよね。今は議員に対する忠誠心が昔ほど強くないので、週刊誌へのタレコミは日常茶飯事だと思います」(Aさん)
議員と秘書の関係は、時代とともに変化してきた。
「昔は、仕事がキツくても秘書を可愛がってくれる議員も多かったので、裏切る人は少なかった。でも最近は、悪いことをすればすぐに世間にバレてしまうから、いわゆる“豪腕”な議員も減りました。その結果、秘書との関係もドライになって、かなりサラリーマン化していますね」(有馬氏)
嫌な上司がいれば告発するという会社の図式と、そんなに変わりないというわけだ。
「秘書の仕事を続けていきたいから黙って耐えている人もいますし、私もそのひとり(笑)。でも、議員の弱みはいつも最後の切り札として手元に持ってますよ」(Bさん)
いったいその切り札を切るのはいつなのだろう……。
「議員のなかには、手柄は自分のもの、悪いことは秘書のせい、って思ってる人もいるんです。なにか不正が明るみに出たら“報告がなかった”“秘書が勝手にやった”って平気で言いますから。責任を押しつけられそうになったときのため、駆け引きの道具として議員の弱みを握っておくんです」(Bさん)
具体的な事柄は伏せながらも、議員に対する不満が止まらなかった現役秘書たち。永田町には“戦争”の火種が常に転がっている─。
有馬晴海 政治評論家。ʼ58年長崎県佐世保市生まれ。立教大学経済学部卒業。リクルート社勤務などを経て、国会議員秘書となる。ʼ96年より評論家として独立し、現在はテレビ、新聞、雑誌等での政治評論を中心に講演活動を行う