書類はできあがったが、送り先は直属の上司を避け、海上幕僚監部(海幕)にした。
「X氏は“俺はパワハラなんて揉み消せる”と以前から言っていたので、《本来の直属の上司の病院長ではなく、こういう形で送らせていただきますので、第三者の目で調査をお願いします》と、手紙もつけました。私は実際の被害者ではないので、答申書自体はBさんが送ってくれました。それが昨年の2月初旬です」(Aさん)
送ってからほどなくして、海幕からBさんに連絡が来た。
「“書き方に不備があるし、詳細な話を聞かせてほしいから来てほしい”と電話があったんです。行くと、なぜか倉庫のようなところに連れて行かれましたが、そのときは“今の就職先を書いた方がいい”とか、普通に添削をしてくれたので、その部分を直して再提出しました」(Bさん)
その後、3月中旬ごろには“ハラスメントの現場を見たことがあるか?”と、病院内で聞き取り調査があったが……。
「記名制のアンケートだったため、誰も書きたがらなかったそうです。僕らの意図としては、第三者に見てもらいたいから、わざわざ海幕に送ったんですが、結局内部で調べることになったと知り、がっかりしたのを覚えています」(Aさん)
病院の総務課長らとBさんは電話でやりとりもしており、
「申告書に間違いはないか聞かれたので、“答申書に書いてあるとおりです”と答えています」(Bさん)
調査はあったものの、その後は何も動きが見られなかった。“どうなったのだろう”と疑問に感じること約半年、昨年の9月下旬にいきなり事態が動いたという。Aさんが当日のことを振り返る。
急に家宅捜索の令状が出されて逮捕されたAさん
「いつもどおり勤務していたら、海上自衛隊警務隊の方が5人ほど来たんです。“X氏のことで”というので、応じました。やっと話が動き出したのかと思ったら、車に乗せられ、私の家に連れて行かれて、急に家宅捜査の令状を出されたんです。驚きましたが、“令状が出ているなら拒否できないし、仕方ないのかな”と応じました」(Aさん)
その後、Aさんは“虚偽告訴”“自分の階級と権力を使って嘘の答申書を書かせて、X氏を陥れようとした首謀者”として逮捕された。