2014年4月7日週:STAP細胞論文不正疑惑
2015年4月6日週:天皇皇后両陛下・パラオ公式訪問
2016年4月4日週:桃田賢斗&田児賢一・違法カジノで賭博
2017年4月3日週:北朝鮮・弾道ミサイル発射
2018年4月2日週:ビートたけし独立&オフィス北野内紛騒動
2019年4月1日週:新元号「令和」に決定
2020年4月6日週:コロナ感染拡大・国内では初の緊急事態宣言
2021年4月5日週:コロナ感染再拡大・まん延防止措置適用
2022年4月4日週:ロシア軍・ウクライナ複数都市で残虐行為か
2023年4月3日週:エンゼルス・大谷翔平・投打で活躍
「STAP細胞は、あります」の会見を何度も見たのも懐かしいが、北朝鮮の脅威をこぞって伝えた頃は金正恩の顔を連日ワイドショーで見た気がする。
これは4月のデータだが、この10年ワイドショーはモリカケサクラなど政治問題を追うかと思えば、タレントたちの不倫問題を次から次に追いかけ、カルロス・ゴーン氏が逮捕されると連日その行状を晒し、週刊文春が何かを暴けばそのスキャンダルを後追いしてきた。悪くいうと叩く題材が見つかると一斉にそこにカメラとマイクを向けて追いかけ回した。同じ話題を連日取り上げ、細かな新情報を粗探ししては紹介していた印象がある。
ギスギスした空気が朝のテレビから消えた
そういう過熱取材がすっかりなくなったわけではないが、今年4月第1週の変化は、ひょっとしたらテレビの大きなパラダイムシフトの一つではないだろうか。WBCはもう終わったのに、そしてメジャーリーグのデビューは少し前なのに大谷翔平の活躍がテレビの話題を埋め尽くしているのは、もはや叩く相手を探して回るギスギスした空気が朝の時間のテレビから消えつつある、その象徴ではないか。
元々のワイドショーは芸能情報が中心で、追いかけ回す相手は離婚や不倫をしたタレントたちだった。それがいつの間にか報道的な方向にどんどん傾き、報道番組なのか情報番組なのかわからなくなっていった。ちなみに多くの局は、報道局と情報局は別の組織で、ワイドショーは後者が制作してきた。内部ではどこかに中途半端さが漂っていたように感じる。
今週になると岸田首相への爆弾襲撃事件を集中的に扱っており、ひょっとしたら元のムードに戻る可能性はある。だが私はもうワイドショーという概念はいらないのだと思う。「モーニングショー」も「めざまし8」も、まったく新しいカテゴリーで捉えるべきときではないか。テレビがワイドショーに象徴されるメディアから脱皮し、本当の意味で人々のためになる存在に進化することを願っている。
境 治(さかい おさむ)Osamu Sakai
メディアコンサルタント
1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。Twitter:@sakaiosamu