現在公開中の映画『シン・仮面ライダー』。'71年にテレビ朝日系で放送された『仮面ライダー』を基に監督・庵野秀明の新解釈と、現代風のアレンジ、CG技術を多用したアクションを交えたリブート作品だが、映画を観賞した人は、
《初代のオマージュが多く庵野監督のこだわりを感じた》
《旧作のファンとして、違和感しかない……》
と、賛否両論。そんな仮面ライダーが現在も愛され続けているのは、一人の男の貢献が大きいとされている。
「仮面ライダー2号こと、一文字隼人を演じた佐々木剛さんですよ。企画段階では登場の予定はなかったのですが、1号を演じる藤岡弘、さんがケガで撮影離脱中に番組を継続させるために生まれたのが2号でした。佐々木さんの明るいキャラクターで番組の人気は上昇。ファンの間で佐々木さんは、ライダーシリーズの方向性を作り上げた救世主のような存在です」(仮面ライダーファンの60代男性)
関係者から招待され『シン・仮面ライダー』を観たが…
佐々木氏は現在、都内の居酒屋『バッタもん』で店主を務めている。シリーズの立役者として『シン・仮面ライダー』はどのように映ったのか。取材を申し込むと、店内で話を聞くことができた。
「映画は関係者から招待されて見に行ったよ。正直、別物で不愉快だったね。なにか作りたいものがあるなら一から新しく作れと言いたい」(佐々木氏、以下同)
初代2号の目には、映画から“肉体感”が感じられなかったようだ。
「俺がやっていたころはトランポリンを使って生身のアクションをしていた。撮影で一番大変な殺陣やスーツアクターを一緒にやった大野剣友会の連中も命を張っていたし。今じゃCGで富士山だって飛び越えられるんだからね」
全身全霊で撮影に臨んだ佐々木氏は今でもヒーローを演じた責任を感じているという。
「もし俺がなにか悪いことをして、作品のファンから“俺の人生を返してくれ”って言われても返せないからね。間違ったことはできないよ」
熱き仮面ライダーのスピリットを語る佐々木氏。自身が演じた2号を『シン・仮面ライダー』で務めた柄本佑に対しては、
「俺の演じたときは1号のほうが身長が高かったんだけど、映画では逆になっていたね。でも原作の石ノ森章太郎先生の描いた、明るいキャラクターになっていたと思うよ」
と認めているようだ。
『バッタもん』の店内には往年のグッズやライダーを演じた俳優たちのサインのほかに戦禍に苦しむウクライナへの募金箱が設置されている。
「仮面ライダーは演じてよかったと思っている。初代で描いた“人間の本質は愛”というのを今の人にも見てもらいたいね」
人間の自由のために戦った仮面ライダー2号。彼の戦いは今も続いている―。