声が良いと自信がつき性格も変わり幸せになる

「喉で声を出すのではなく、身体を振動させ、響かせて声を出す。発声練習と同時に、身体をメンテナンスし、柔軟性をつくっていきます。スポーツと違い、喉を鍛えるのではなく、緩めるという概念です。身体的にもメンタル的にも楽な状態にする。緩めて、プレーンなところに戻す。そうすると本来の自分に近づき、自分の音色で話せるようになる

 企業のエグゼクティブに、教師や看護師、会社員に主婦と、生徒の層は幅広い。説得力を身につけたい、きれいな声を出したい、年を取っても美しい声でいたい、生徒や患者に温かい声で言葉をかけてあげたい─と、彼らの動機もさまざまだ。

「“あなたの声が好きだからと言われ結婚することになりました”という生徒さんもいて、そういう話を聞くとすごくうれしいですね。ただ日本ではボイストレーニングというのはまだまだ認知度が低い。

 例えば夫婦がケンカをしても、心に響く“おやすみ”の声があれば、それで2人はうまくいくはず。声が良いと自信がつくし、性格も変わり、生き生きするし、幸せになれる。それをもっとみなさんに知ってもらえたらと思っています」

 現在は発声表現研究家としてボイストレーニングの普及に力を尽くし、並行して作曲活動とライブ活動も再開した。この夏には、大阪と名古屋でライブを開催。地方でのライブは10数年ぶりで、チケットは早々にソールドアウトを果たし、追加販売に踏み切った。加えて9月に渋谷で東京公演の開催が決定。久々のバンド演奏で、ファン待望のステージとなりそうだ。

「今回は『ほっとけないよ』やそれ以前から僕の歌を聴いてくださっている方、支えてきてくださった方に向け、おなじみの曲、懐かしい曲を今の僕で歌おうと思っています。きっとご自身の思い出と重ね合わせているのでしょう、ライブでは涙を流すファンの方もいて、僕も歌っていて幸せな気分になりますね」

 父の指導のもと、物心つく前から音楽家になるべく育てられ、音楽の世界で生きてきた。「そこでの迷いや挫折の経験は?」の問いには、「一度もありません」と力強く即答。ボイストレーニングの指導に作曲にライブ活動と、3足のワラジを朗らかに履きこなす。

「3つやって大変じゃないですか?とよく聞かれるけれど、そんなことはまったくないですね。僕の中ではどれも同じで、響きを出すということ。その先には必ず幸せがあると思っています。

 歌手や企業のリーダー、家族、友達同士にしても、良い声のところには人が集まってくるから。僕はやっぱり人の声を聞くこと、音楽をすることが好きなんだと思う。そこに対して父は夢を見せてくれた。本当に好きだったら迷わないし、好きだったら夢中になるし、迷っているヒマなんてない。大好きだから、きっと僕は今でも夢中なんだと思います

<取材・文/小野寺悦子>