若いころに戻りたいとは思わない
センスを活かしたネタなど、今はいろんな方法で笑いをとっている。
「ちゃんとネタで笑わせる人も増えたのはうれしい。男性ばりに身体張って笑わせる子たちもいて、すごいです。ゆりやんレトリィバァとか、ガンバレルーヤとか大好きです」
年齢を重ねライフステージが変わる中、笑いの仕事を続けていく難しさもあるだろう。
「私の場合は、お笑いで出られない時は、他の仕事をしたりうまく発散できましたからね。ただ、年相応の苦労はあります。セリフ覚えも悪くなってきたし、目もかすむ。昔ほどは走れない。でも若いころに戻りたいとは思わない。今のほうが面白い。若いときも面白かったけど、昨日より今日、今日より明日のほうが、ワクワクしてます。だから、これからもっと面白いことやりますよ」
『M–1グランプリ2022』の審査員を務めたのも62歳の新しい挑戦だった。採点のつけ方に対して、批判も浴びたが、それに対してこう発言した。
「批判している人は番組を見てるんだから。見てないよりは全然いい。私が出ることで、同じぐらいの年齢の人もハラハラしながら見てくれた。番組の視聴率に少しは貢献できたから、それでよかった」
このタフさが、厳しいお笑い業界で生き残ってきた底力なのだろう。浮き沈みも、がんもバッシングも経験した。山田邦子はへこたれない。女であることを軽やかに背負いつつ、笑いに生きる。
構成・文/伊藤愛子●いとう・あいこ 人物取材を専門としてきたライター。お笑い関係の執筆も多く、生で見たライブは1000を超える。著書は『ダウンタウンの理由。』など