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ー 両親が法廷で明かした悲痛な思い
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ー 犯人は娘から一度も聞いたことのない知らない名前

 

「おまえの顔忘れないからなっ」

 5月10日、さいたま地裁である殺人事件の裁判員裁判が行われた。最終弁論の最中、傍聴していた遺族のひとりが被告に向かって声を荒げ、静まり返っていた法廷は一時騒然となった。

両親が法廷で明かした悲痛な思い

 この事件は’22年1月27日、埼玉県越谷市のアパートの一室で起きた。

「当時33歳だった岩渕未咲さんの部屋のベランダに、当時25歳だった古川大輝被告が侵入。用意していた包丁で美咲さんの胸や腹などをメッタ刺しにし、殺害したんです。

 2人はライブ配信者(通称・ライバー)と視聴者(通称・リスナー)の関係で、リスナーだった被告が一方的にライバーである岩渕さんに好意を募らせた上での犯行といわれていました」(全国紙社会部記者)

 5月8日に行われた初公判でも、起訴事実を認めた古川被告。2人の間に何があったのか。公判で明らかになったのは、古川被告の身勝手すぎる動機だった。

「当時、専門学生だった古川被告は、事件の数か月前から岩渕さんのライブ配信の視聴者になっていたようです。起訴状によると、“岩渕さんから別れを告げられたことからホームセンターで包丁を購入して、岩渕さんのアパートのベランダに侵入した”とあります。事件の数日前から岩渕さんのアパート付近をうろついていたり、事件当日もベランダで7時間も待っていたことから相当な殺意が見受けられるが、果たして本当に交際していたといえるのか。

 被告は岩渕さんのライブ配信のいわば客だった。どのくらい被告が“投げ銭(オンラインでの課金)”をしていたかはわかりませんが、専門学生だった被告からすると貢いだ気になっていたのかもしれません。思いを募らせていった被告は岩渕さんと交際したと思い込み、わずか1日会っただけなのに“付き合っていた”と証言しています。逆上させないためだったのでしょう、岩渕さんが“ライバーとリスナーの関係に戻ろう”と告げたことから一方的に殺意を覚えたようです」(同・全国紙社会部記者)

 被害者がライブ配信でどれくらいの収入を得ていたのかは明らかにされていないが、優しい人柄でリスナーも多かったという。

 両親や親族からも愛されていた未咲さん。両親は被害者参加制度を使って、公判に出席していた。聞くに堪えない場面も多かったであろう。未咲さんの母親は、最後の意見陳述で涙ながらに悲痛な思いを明かした。

私の娘の未咲は、窓から侵入してきた男に殺されました。それも、たった一度しか会ったことのない男に包丁で身体中7箇所もメッタ刺しにされたんです

 未咲さんは実家から歩いて10分程度の距離のアパートで一人暮らしをしていた。未咲さんの母親はいつも仕事が終わると、未咲さんに電話をかけていたという。

「午後6時8分に娘に電話をしています。その日、娘は電話に出ませんでした。午後6時25分ごろ、(娘のアパートの)玄関の鍵を開けて入ると、電気はついていましたが娘の姿は見えませんでした。呼んでも返事がありません。

 ダイニングのドアを開けると、正面の窓は全開でカーテンが風に揺れていました。私の背後から娘の可愛がっていた猫が走ってきて、顔をキョロキョロさせました。その方向を見ると娘が仰向けに倒れていたのです。娘の白い部屋着が真っ赤に……。左側と身体の脇の間に黒い包丁が突き刺さっていました……