重複処方とためこみで「相当量」の可能性
「例えば、脳の働きを抑える作用のある向精神薬を飲みすぎれば、呼吸などの活動まで抑えられてしまい、命に関わる危険があります。医療機関で医師が処方する場合には、そうした副作用が起きないよう用法や用量が決められており、ただちに命に関わるような量が処方されることは考えにくいと言えます。
ただし、例えば2008年に発表された調査では、向精神薬を過量服用して救急外来に搬送された人(273件)のうち、薬剤の入手経路の8割以上(229件)は“患者本人に対する医療機関からの処方”。医療機関による安易な処方が疑われるケースのほか、患者側が過去に処方された薬を使わずにためておいたり、複数の医療機関を受診して重複処方を受ける場合もあると指摘されています」
猿之助さんの父と母に持病があり、向精神薬をためていたのか、それともーー。
入手経路や入手時期など詳しい捜査が行われる見込みだ。
医療ジャーナリスト・市川衛さん
医療の「翻訳家」/READYFOR(株)基金開発・公共政策責任者/(社)メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。19年Yahoo!ニュース個人オーサーアワード特別賞。21年よりREADYFOR(株)で新型コロナ対策・社会貢献活動の支援などに関わる。主な作品としてNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」「医療ビッグデータ」(テレビ番組)、「教養としての健康情報」(書籍)など。