遺族は「わかりました」としか言えない
ところが、均等に分配する破産手続きに移行となった。
「破産手続に移行することの判断は最終的には裁判所が決定します。フーズ・フォーラスさんは、被害者を含む債権者への弁済原資のため、ユッケ用生肉を納入していた食肉卸会社の『大和屋商店』を相手に損害賠償を求める訴訟を起こしました。しかし、これ以上、新たにお金を作ることが見込めず、債権者とも特別清算の協定成立の見通しが立たなかったことから、裁判所がもはや特別清算では無理であろうと判断したと考えられます。また、ご遺族への方への賠償命令も出て、一連の裁判が終結しているということも、このタイミングでの移行になった一因だと考えられます」
被害者の遺族への賠償はどうなるのか。
「ご遺族の方へ賠償の判決が出ているので、ご遺族も債権者になります。ただ、破産の手続きとなりますと、債権者が会社側に対して、持っている債権の金額によって要求できる額が決まってしまいます。このケースではおそらく、銀行が多額の債権を持っている可能性もありますし、当然お金が十分にあるわけでもないことから、ご遺族の方が満額を受け取るのは、難しいかと考えられます。今後は裁判所が選んだ破産管財人が各債権者への配当額等を報告する、債権者集会がおおよそ3か月から半年くらいの間に開かれるでしょう。
もちろん、ご遺族の方も債権者なので、そこに呼ばれることになります。他の事案では怒号が飛ぶような債権者集会もありましたので、今回もそのようなことがあるかもしれません。ただ、会社のお金はこれ以上増えることはないでしょうから、破産手続は、粛々と現在あるお金を分けていく、ということになってしまいます。ご遺族の方も“わかりました”としか言えない状況も残念ながら出てくるかもしれません。満額をお支払いするだけの財力はないので、全員が納得できる終わり方は難しいかと思います」
生肉の提供をはじめ、食品の衛生観念に大きな影響を与えたこの事件。風化させることなく、二度と同じことが起こらないよう教訓としたい。