寄せられた不満の声を見ていくと、「子育ては初めてのことばかりで、私も情報を集めたり不安に思ったりしながらどうにかやっている。妻の指示待ちでいいやなんて考え自体がありえないし、もっと父親としての自覚を持ってほしい」(33歳・パート・静岡県)といった意見も。

 夫が家事・育児を“できない”ことへの不満というよりは、“やろうとしない”意識の低さに対する嘆きの声がほとんどだ。

「10年もたたずに、確実に社会は変わっていきます」

「日本では母親が息子に何かと手を焼いてあげることが美徳といった、マザコン文化のようなものが連綿と続いている結果なのかなとも思います。“子ども並みに夫に手がかかる”なんて不満が多いのもまさしくその表れで、女性に甘え慣れしてきた男性たちが、いざ父親になったときに急に積極的に家事・育児に参加できるかというと、なかなか難しかったりもする。子育て支援とともに、“親育て”(ペアレンティング)というのもとても重要です」(熊野さん)

 男性の家事・育児への参加は夫婦の個別の問題だけではなく、社会問題でもある。「夫の会社に育休の文化が根付いておらず、土日もフルで仕事。社会が変わらなければ夫婦そろっての子育ては難しいと思う」(38歳・パート・大阪府)と、夫の会社や働き方に対する“恨み節”も多い。

「男性の育休取得は少子化対策としても重要な問題。ただし、改正された育児・介護休業法が昨年4月から施行され、男性の育児参加への環境も法律も年々アップデートされてきています。また、10代20代への意識調査では、“男女の共働きは当たり前”“家事・育児は夫婦共に行うべき”“自分も育休を取得するつもりだ”という考え方がマジョリティーになっています。あと10年もたたずに、確実に社会は変わっていきますよ」(熊野さん)

 妻からすると、つい愚痴がこぼれてしまいがちな夫の家事・育児参加の実態。夫をどうにか変えようと息巻くのではなく、自分の意識を変えていくことも必要かもしれない。

「誰かに言われたわけではなくても“母親なのだから子育て中は何かとガマンするのは当然だ”と、謎の罪悪感を持ってしまう女性は実は多いんです。自分の自由を縛ってしまう“呪い”のようなものがどこかにあって、それが必要以上に家事・育児を大変にしてしまっているということもありえます。

 一方で、お金を払ってベビーシッターを頼んだり、自治体の託児サービスを利用するなど、自分だけの時間を確保することも、やろうと思えば意外と簡単にできる世の中です。何より夫は敵ではなく、夫婦という子育てチームの重要なパートナー。どういう育児をしたい、どう分担していきたい、いつ休みが欲しいなど、自分の気持ちをきちんと伝え、まず対話をすることが大事だと思います」

 自由な子育てのカギは、自分自身の中にあるのかも。

お話しを聞いたのは……熊野英一●株式会社子育て支援代表取締役。企業主導型保育所、児童館、子育て支援センターの受託運営、アドラー心理学に基づく企業向け研修などを展開。『夫婦の教科書 愛に向き合い、家庭をつくる』(アルテ刊)等、著書多数

(取材・文/吉信 武)