夫との間に亀裂が入り始め「2人目はいらない」と
「驚いたことに、夫には貯金というものがありませんでした。夫はキャデラックが大好きで、買い替えてはカスタマイズの繰り返し。そこにすべてを注ぎ込んでしまうので、ニュージャージー行きの旅費もなく、私が捻出しています。
広い家にワイフがいて、犬がいて、キャデラックがあって─、という理想の結婚生活がきっと彼の中にあったのだと思います。まだ横浜・中村橋にいたころ、夫が突然、シェパードとアフガン・ハウンドのハーフ犬をもらってきたことがありました。
とはいえ、アパートでそんな大型犬を飼えるはずもなく、知人に頼み込んでなんとか引き取ってもらっています。ところが根岸に越すと、今度はアフガン犬を家に連れてきた。
夫は『血統書付きなんだ』と得意そうです。さらにオウムに金魚も飼うことに。それにとどまらず家具も次々届きます。夫は『安く譲り受けた』と言うけれど、私としてはひと言相談してほしかった」
夫とは金銭感覚から物の価値観、考え方まですべて違った。互いにまだ若く、溝を埋める余裕もなかった。
「夫にプロポーズされたとき、『私は歌を続けるけど、いい?』と聞いたら、彼は、
『どうぞ』と言ってくれました。でもドレスにハイヒール姿で夜な夜な店へ出る私の姿を見て、やはり気に入らなかったのでしょう。
娘の面倒を見ると約束をしていても、私が店へ行く時間になると何も言わずキャデラックに乗って出かけてしまう。仕方なく私は娘を抱えて店へ行き、楽屋でボーイさんに見ていてもらうようなことも多々ありました。夫の理想の結婚生活と私のそれは違っていた。いちばんの違いは子どもで、私は子どもがたくさん欲しかった。5人は産もうと思ってた。でも彼は娘が生まれると、『2人目はいらない』と言って、避妊をするようになりました」(次回に続く)
<取材・文/小野寺悦子>