人が喜ぶことをする“やなせイズム”を胸に
戸田自身もアンパンマンに救われた経験があるのだろうか?
「アンパンマンというか、原作者のやなせたかし先生の“やなせイズム”に、ですね。作品のあちこちに人間世界の縮図や生き方が描かれている。先生はよく“人が喜ぶことをしなさい”とおっしゃっていて、それを胸に刻んできました。見返りを要求せず、パワーダウンするとわかっていても自分の顔をちぎって提供するアンパンマン。そんな生き方をしていれば戦争もないし、人と諍うこともないですよね」
押しつけではない、無償の愛。
「それを伝える役を私たちは与えられた。どのお仕事も大切だけど、生まれてきた子どもたちの誰もが1回、ここを通っていく。そんな作品に出会えていることは特別だし、人生においてのビッグプレゼントだと思っています」
デビュー50周年惜しみなく丁寧に
16歳のときに演歌歌手としてデビュー。今年は戸田にとっても芸能生活50周年に当たる。今後の夢を尋ねてみると、
「“なんでもかんでも”という時代は私の中では過ぎていて。自分にはもう、あまり時間がないということを自覚しているんです。いろんなことに時間がかかるから、本当に丁寧にやっていかないといけない。
私はほとんど舞台で生きてきたので、やっぱりステージで還元していくことが理想ですね。お客様のダイレクトな反応の中でパフォーマンスすることが生きがいで、モチベーションなので。だから体力勝負。夢だと思っていたことでも、実現できることはあると思うので。惜しみなく丁寧にやっていきたいと思っています」
誠実でパワフルな言葉に、勇気がりんりんと湧いてくる――。
最新作の見どころは?
「“ぽかぽかプレゼント”という言葉に象徴されるとおり、アンパンマンはいつもその精神なんですよね。ロボリィ(声・桐谷美玲)は最初は温かな心を持ち合わせていないんですが、それを習得していく成長物語。劇中の歌も素晴らしいんです。
ぜひ、大人の方がお子様を劇場に連れていって、その醍醐味を体感させてあげてほしいです」