在宅介護の知識がなく最期に苦しい思いを
ハードなスケジュールのなかでも自分の時間を持つこと、待ち時間でも耳だけは澄ませ、出番がきたらパッと気持ちを切り替えることは、10代のころから芸能界で培ってきた習慣の賜物。それが介護生活でうまく活きた。
加えて、「意外と頑丈なんですよ、私」と大場さん。段ボールを敷きさえすれば、どこでも寝られるような図太さが介護生活の助けになったと笑う。ただ、父の最期のことは、今も後悔として残っている。
「亡くなる3日くらい前から、父は痛みと弱くなっていく呼吸に苦しんでいました。最期の約1時間は、本当に息が苦しそうで。でも、わが家には酸素ボンベがなかったんです。からんでしまった痰を吸引するための器具もない。
在宅で看取るための医療器具がまったくそろっていませんでした。そのことに気づくのが遅すぎて、最期に苦しい思いをさせてしまった。在宅介護の知識をもっと持つべきでした」
その後悔もあり、在宅介護インストラクターや認知症介助士、介護食アドバイザーなど、介護に役立つ資格を幅広く取得してきた大場さん。学んだスキルは、この先に待っているだろう義父母をはじめとした家族の介護に活かしたいと思っており、その思いが義父母との同居につながった。
今は、自宅にあるちょっとした段差をDIYでなくして暮らしやすい環境を整えたり、身体のことを考えた食事を作ったり。義父母と同年代の人が登場するYouTubeの動画を見て、同居暮らしの参考にすることもある。ただし、そこで得た情報は、そのままうのみにするのではなく、自分たちの生活と照らし合わせながら取り入れている。
「いくら身体によい食べ物があったとしても、本人が食べたくないもの、好きではないものを無理して口に入れてもらうような介護はしたくないと思っています。逆に、身体にとってはマイナスになるようなものでも、それが本人にとって幸福感を高めるものであれば受け入れたいなと。身体や心によいと思うものは提案こそすれ、決めるのは本人。そのスタンスで義父母の人生のサポーターでいたいと思っています」
自身のYouTubeチャンネルでは、義父母との同居スタートを報告し、仲むつまじい暮らしが垣間見える。しかし、もちろんそんな日ばかりではない。生活の些細なズレに“不満が募ることもある”と感じるのが正直なところだ。では、なぜそこまで迷いなく献身的でいられるのか。
「40歳くらいのとき、もう人生をやり尽くしたなって感じたんです。芸能人として長く応援していただいて、なかなかできない経験もたくさんさせていただきましたから。この先はお世話になってきた人に恩返しをして死にたいなと思いました。すごく“いい人”みたいに聞こえてしまうかもしれないけど(笑)。
義父母の介護については、昨日もパパ(夫)と話しましたが、実の両親と義理の両親という関係性の違いもあって意見が分かれることも少なくありません。でも、どんなことも話し合うようにしています」