ジャニーズ臭が少なく平凡を演じれるのが相葉雅紀の強み

 相葉の俳優としての強みは、目立たない人物役もハマるところ。櫻井翔二宮和也(40)、松本潤(39)が地味なキャラクターを演じようとすると、きらびやかなジャニーズ臭が隠しきれず、どうしても無理が生じがちだ。

 相葉が2年前に同じ『金曜ナイトドラマ』で主演した『和田家の男たち』も平凡な持ち味が生きた。役柄はちょっと頼りないながらも心根の優しいネット記事ライターだった。特別な能力があるわけではないものの、誰もが共感できそうな男だった。

 今年4月には大御所・石井ふく子プロデュサー(96)に買われ、TBS系のスペシャルドラマ『ひとりぼっち 人と人をつなぐ愛の物語』に主演。脚本家の故・橋田寿賀子(享年95)に捧げる追悼作品だった。相葉は石井・橋田作品に出たことがなかったが、大抜擢された。

 相葉の役柄は15歳の時、両親と姉を津波で両親を失い、その悲しみから抜け出られない水道メーター検針員。やっぱり平凡な男だった。

 平凡キャラはバラエティーのメインやMCにも生きている。自分だけが目立つようにはせず、共演陣から見せ場を奪わない。それによって番組に調和が生まれている。マイクを離したがらない、みのもんた(78)ら平成型のMCとは大違いである。

 だから『みんなのどうぶつ園』は3年、『相葉マナブ』は10年も続いている。年1回のペースで放送されるスペシャル番組『はじめまして!一番遠い親戚さん』(日本テレビ系)を始め、スペシャル番組のMCを託されることも多い。

 出る杭は打たれる。また、目立つ人間は敵をつくりやすい。「嵐」で先頭集団にいると思われた櫻井は春ドラマ『大病院占拠』(日本テレビ系)の演技が「セリフが棒読み」などと酷評された。同じく松潤は主演しているNHK大河ドラマ『どうする家康』について「存在感が薄い」などと冷ややかな言葉を投げ掛けられている。一方、気が付くと、相葉を批判する声はほとんど聞かない。「芸能界は目立ってナンボ」とよく言われるが、必ずしもそうではない。

 相葉は2021年9月に1歳年上の一般女性と結婚。アイドルでありながら、ファンの間から失意や落胆の声はほとんど上がらなかった。ファンは平凡で好青年の相葉を応援してきたのであり、盲信的に憧れていたわけではなかったからではないか。結婚後の人気は独身時代と変わらないと言って良い。アイドルでありながら珍しい。

 おそらく人気は年を重ねても衰えないだろう。「嵐」の伏兵かも知れない。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。