『離婚しようよ』で交わる2つの才能
続いて4位は東野圭吾のミステリーをクドカンが脚色した異色作『流星の絆』('08年 TBS系)。二宮和也、錦戸亮、戸田恵梨香の3きょうだいが両親の復讐のため、詐欺師に……とあらすじだけを見ると重々しいドラマに思えるが、そこは宮藤官九郎。「シリアスな中に突拍子もない笑いがちりばめられていて、その絶妙なバランスが最高だった」(大阪府・48歳男性)などの声が。
「この作品、めちゃくちゃ泣けるんですよ。宮藤さんって実は“哀しみ”を描くのがとても上手な作家さんで、二宮さんが真犯人と向き合うシーンなんか絶対泣いちゃう。もちろん、宮藤さんならではのヘンテコ設定もあるし、詐欺シーンが劇中劇になってる部分など構成も工夫されていて、ドラマとしてもよくできています」(カトリーヌさん)
そして5位には名作『タイガー&ドラゴン』('05年 TBS系)が入った。
「ヤクザ(長瀬智也)が落語家(西田敏行)に弟子入りするお話で、まさにクドカンワールド。宮藤さんってミスマッチな題材を上手にシンクロさせる作風があると思うんですけど、この作品もヤクザと落語という組み合わせが絶妙でした。毎回実際の落語噺と重なるエピソードが描かれ、それを長瀬さんが落語で語るという多面的な構造も見事でしたね」(カトリーヌさん)
こうして振り返ると“したたかな大人の女性”を描き続けた大石静と、男性の“永遠の少年性”を面白おかしく描いてきた宮藤官九郎は真逆の作家性を持つように思えるが、『離婚しようよ』ではそのベクトルの違いが、ドラマに今までのそれぞれの作品とは異なる奥行きをもたらしている。
「松坂桃李さんの役のバカさ加減は大石さんには書けないし、錦戸亮さん演じる絶妙に悪い男なのに女は惹かれてしまうあの感じは宮藤さんには書けない。男子の目線と女子の目線がうまい具合に混じり合っていて、共作の醍醐味ですよね」(カトリーヌさん)
今後、大石は吉高由里子が紫式部を演じる大河ドラマ『光る君へ』('24年 NHK)が控えており、宮藤は山本周五郎原作の『季節のない街』の脚色作品がDisney+で8月9日より配信される。
「大石さんが描く平安貴族の生々しいドロドロな恋物語はめちゃくちゃ楽しみ(笑)。平安時代は時代劇でもなかなか描かれないので、当時の女性の生き方や強さをどう描くのか。衣装や美術含めて楽しめる大河になると思います。宮藤さんの独特の世界は配信ドラマにすごく合っていると思うけど、マニアックになりすぎちゃうのも怖いので、たまには地上波に戻ってきてほしいですね。個人的にはもう一度朝ドラを書いてほしい。『離婚しようよ』のスピンオフじゃないですけど、仲里依紗さん主演の『巫女ちゃん』でもいいので(笑)。期待しています!」(カトリーヌさん)
取材・文/蒔田陽平
カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など