[証言1] 元大手中学受験塾Aの社員

 松永さん(37歳女性・仮名)は、2010年に大手中学受験塾Aに新卒で入社後、6年間勤務した。仕事内容は入塾等に関する保護者対応、塾講師の勤怠管理、日々の受付対応など、「実際の授業以外」の教室運営全般を担っていた。

 Aさんが勤めていた大手中学受験塾は、授業を行う講師は基本的に社員もしくは業務委託。アルバイトはいなかったという。

「まず塾講師業界というのは圧倒的に給与や待遇が悪い。就職活動でわざわざ塾業界を選ぶ人は当時もほとんどいなくて、私も難航した就活で唯一内定したのがここ(大手中学受験塾A)だったので、半ば仕方なく入社しました。

 教室運営は常に人手不足。都心の校舎であっても、講師以外のスタッフは1〜2人で回しているような状況でした。情熱を持って授業を行っている先生ももちろんたくさんいますが、 “塾講師は社会性の欠けた人が多い”という偏見を持たれがちだという雰囲気は少なからず感じました」(元大手中学受験塾A社員・松永さん、以下同)

 今回の四谷大塚の盗撮事件について聞いてみると。

「“生徒を盗撮してはいけない”、なんて当たり前すぎて、職務規定なんかにはありませんよ。すべての教室にカメラはついていて、授業中の生徒や講師の様子はすべてリアルタイムで確認できるようになってはいました」

 松永さん自身もその大手中学受験塾Aには小学生当時に通っていたという。

「小学生のころ、自分が生徒として通っていたときの印象はとてもいいんです。学校とは別で通う放課後の受験塾は、習い事の延長のようなイメージで楽しかった。先生もみんないい人ばかりで、私の親も安心して通わせていたと思います。

 ただ自分がいざ就職したときに見えてくる景色は違いました。まず、講師は基本、生徒である小学生の子どもとしか接していないので、ビジネスマナーなどに欠けている人が多い。我々のような事務スタッフや保護者とのやりとりはうまくいかないことがしばしばです」

 松永さんの口から飛び出す塾講師の実態は、ネガティブなワードが続いた。これらはすべて、保護者や、まだ幼い生徒からはけっして見えてこないものだ──。