「この仕事を始めてからが置かれている状況にも詳しくなりました。今、飼いはどんどん長生きするようになって、20年以上生きるも珍しくありません。となると、人間もある程度若くないとを飼い始めることができない。でも20代、30代の人は飼おうと思っても飼えないことが多いんです。その理由は断トツで『住んでいる部屋がペット不可だから』です」

 中にはペット可物件もあるが、その多くは犬1匹までで、オーナー側は「ペットショップで犬を1匹買う入居者」をイメージしていることが多いのだそう。だがの場合は、拾うなどして突然飼うことになってしまう人も多く、さらにそのうちの6割は親子や兄弟を保護して複数頭抱えることになり、ペット可物件といえども入居できないことも多いのが現実だ。

「そうやって人間側の条件が整わないまま、死んでしまう野良もとても多い。なので特に若い人に、が複数頭飼える賃貸で保護を迎えられることを知ってほしく、ノラネコ割を設けています」

 今年6月、そんな仕事ぶりと愛家ぶりが注目され、木津さんは『坂上どうぶつ王国』で「世界初の専用賃貸アパートをつくった人」として取り上げられた。反響は?

「視聴した好きの方から『うちの土地を好きに使ってほしい』とお申し出をいただきました。関心を持っていただけてありがたいことです」

 最後に、と今後の仕事への思いを伺った。

「ウーは死んでしまいましたが、きっかけをつくってくれたチーは18歳になりました。少しボケてはきましたけれども、今も大切な家族です。今後は全国に1棟でも多く人がと暮らせる物件ができて、できればそのお手伝いをさせていただき、不幸なを1匹でも減らしたいですね」

 人とが共に幸せになれる環境が、これからも誕生しそうだ。

お話しを伺ったのは……木津イチロウさん●Gatos Apartment代表。1971年東京都生まれ。大手企業のサラリーマンだったが、野良猫のチーとの出会いがきっかけで2011年、世界初の猫専用賃貸「Gatos Apartment」を東京・杉並区に竣工。以降、猫専用賃貸プロデューサー、コンサルタントとして活躍中。
gatos-apartment.com

(取材・文/小林延江)