以下、『わろてんか』('17年)、『マッサン』('14年)、『おちょやん』('20年)と続くが、全体を通して見ると、視聴者の期待どおりに物語が進まない作品がランクインしている。
カタルシスは絶対に必要
「最近の視聴者って、ストレスにものすごく敏感な傾向があると思います。つらい状況の人に感情移入しすぎて自分自身の心が疲労してしまう共感疲労という言葉があるんですけど、まさにこれが朝ドラを見ているときに感じる主なストレスの要因だと思います。
朝からこんな嫌な気持ちになりたくないという。もちろん、イージーモードはつまらないですけど、ヒロインに苦難が降りかかるとしてもそれを凌駕するカタルシスは絶対に必要だと思います」
視聴者のイライラを長引かせないというのが、好感度の高い朝ドラを作る秘訣なのではともカトリーヌさんは語る。
「そのために必要なのが“良心”というポジションのキャラ。その人はブレずに主人公を支える。例えば『らんまん』('23年)の万太郎(神木隆之介)なんて相当めちゃくちゃな人じゃないですか。
でも、奥さんの寿恵子(浜辺美波)は絶対的に支持し、支えていく。『あさが来た』('15年)の新次郎(玉木宏)もそうですよね。妻のあさ(波瑠)を支えつつ、本当にダメなときはちゃんと諭す。そういうキャラがいれば視聴者も納得します。
ストレスが悪いわけじゃなくて、無駄に長引かせずにどこかでカタルシスを用意するのが大事。朝ドラにストレスは不可欠なんですよ。それがないと面白いドラマにはならないので」(カトリーヌさん)
要は物語をどう描くかということだろう。面白かった朝ドラの3位に入っている『ちゅらさん』('01年)は、舞台が沖縄で、トラブルメーカーの兄がいて……と設定的には『ちむどんどん』とほとんど同じ。描き方やキャラクター造形によって、これほどの評価の違いが出てしまうのだ。
「『ちゅらさん』は脚本が岡田惠和さんで、『ひよっこ』('17年)もそうですけど、けなげで素朴なヒロイン造形がものすごくうまいんです。絶対に応援したくなるヒロイン像なんですね。
やっぱり、ヒロインがどういうキャラクターなのかはものすごく重要で、面白かった朝ドラの1位の『あまちゃん』('13年)の能年玲奈(現・のん)さんは、今見てもキラッキラに輝いてます。しかも、『純と愛』の次の朝ドラだったから、闇からの光というギャップがハンパなかった(笑)。
夢への挑戦と家族愛という朝ドラの根本的なテーマは不変で、変わるのはヒロイン像。そこにどう時代性を織り込み、オリジナリティーを生み出していくか。普遍的なテーマをストレスなく見せてくれて、笑って泣ける。それが支持される朝ドラなんだと思います」(カトリーヌさん)
取材・文/蒔田陽平
カトリーヌあやこ 漫画家&テレビウォッチャー。著書にフィギュアスケートルポ漫画『フィギュアおばかさん』(新書館)など