話題作『VIVANT』はテレビドラマの希望
今期の良作はまだまだ止まらない。お次は今期いちばんの話題作だった『VIVANT』(TBS系/TVerお気に入り数183.6万人)。最終回の視聴率は19.6%。
「なんだかんだ面白かったですよね。ああいう作品が放送されることは、テレビドラマの希望だと思いました。今のドラマってリアリティをすごく重要視して、物語のスケールは小さいものが多い。
日常や仕事などのリアリティを丁寧に描くドラマが全体的に増えた中で『VIVANT』の世界はあまりに遠く、身近さはまったくなく、出てくる言葉も知らないものばかり。遠い世界の大スケールの物語を、あれだけのお金と手間をかけて見せてくれるワクワク感。地上波のドラマでこんな作品が見られるというお得感を含めて、必見作品だったと思います」
ドラマはリアルタイムでの視聴にこだわらず、録画や『TVer』などでの配信で倍速で見ればいい。そう考える人も増えた昨今だが、『VIVANT』にはみんなで共有する面白さもあった。
「考察系ドラマと言われていますが、SNSでは“よくそんなところまで見ているな”と感心する人から、“服の色が違うからって、それは考察と言えるの?”と笑っちゃう人まで。作り手がかなり計算していて、視聴者が翻弄されて、騒いでいましたよね。次第に登場人物のイラストやパロディなどがSNSには上げられ、みんなが遊ぶように。朝ドラ以外の連ドラでは滅多に見ない現象です」
キャラクターやシチュエーション、セリフ、用語などが作品を離れてひとり歩きする。これは社会現象になるドラマのひとつの法則だと田幸さん。
「『半沢直樹』('13年、'20年)以来じゃないですか? 堺雅人さんを主演とした福澤(克雄)ドラマの上手さですよね。終わってみて“結局、何だったのかよくわからない”と思ったとしても、連ドラってそれでいいと思うんです。別に伏線のすべてを回収しなくても。みんながドラマを批評家みたいな目で見るようになって、整合性と緻密さばかりを優先していったら息が詰まる。先ほど『彼女たちの犯罪』の隙のなさを推しましたけど、いろんなドラマがあっていい。『VIVANT』は誰が見ても面白いドラマだったと思います」