「スナックは大繁盛していてね。夜中までカラオケの音が響いていたよ」
一方、長男のAはおとなしくてほとんど喋らない子だったという。
「母親の連れ子だったA君は、友だちとも遊ばず、ずっと家の中にいるような子だったと聞いています」
Aは高校を卒業するも、一度も就職せずにいたという。
「それでも母親のスナックの手伝いをやったりしていたと思うよ。父親は内装業をやめて、タクシーの運転手をやったりしていた」(別の近隣住民)
父親は15年ほど前に病気で他界。60代後半だった。
「Bさんはスナックから居酒屋に転業したけど、あんまりうまくいかなかったのか、よそへ働きに出て、自営の居酒屋は細々とやっていたみたい。
相変わらずA君はひきこもりで、たまにそばの自販機へジュースを買いに出る程度だった。でも、自宅からは母と息子が笑う明るい声が聞こえていましたよ」(同・住民)
食道がんになった母親が漏らした“弱音”
親子2人で仲良く暮らしていたのだが、母親に病魔が襲いかかる。およそ半年前にBさんに食道がんが見つかって入院することになったのだ。そして、事件の4日前となる9月11日、いったん退院したBさんは知人にこんな話を漏らしていた。
「“今度は頭を手術するので、また入院します”と。“あの子を置いて先には逝けない”って悩んでいた。子ども思いのいい母親ですよ。そのころ、玄関先に飾っていた大好きだった植物を半数以上も処分していたから、死期を悟っていたのかもしれない……」
のちに15日に事件が起きていたことを知ったというBさんの知人。
「てっきりまた入院したものだと思っていた。本当に驚きました」
14日の夜から、15日の未明にかけて、自宅の2階からAとBさんの大きな声が聞こえたという証言もあった。未来を悲観した母と引きこもりの息子は一体どんな会話をしていたのか……。生き残ったAから語られる言葉を待ちたい。