移住先で本当の人生を歩む決意

 千堂さんが東京での芸能活動をやめ、現在の生活に無理なくなじめたのは、父の影響が大きい。

「仕事を始めるときに、父から『自分のことは自分でできるようになっておきなさい』と言われたんです。『芸能人は旬のもの。旬が終わるときに、違うことをやるにしても、普通の生活ができなくならないようにちゃんとした生活を送りなさい』と。その言葉のおかげで、普通の同世代の人と同じような生活を送ることを意識できました」

 同時期にデビューして一緒にいた人が、勘違いをしたり、お金の使い方がひどくなっていったり、芸能界でいろんなことを目の当たりにした。余計に自分は普通の感覚を持っていたいと感じるようになっていた。

「今後の人生を考えたときに“千堂あきほ”か、本名である“さきなあきほ”どっちを選ぶかと言われたときに、私はやっぱり本当の人生を考えながら生きようと思いました。それは父の言葉のおかげ。だからすごく感謝しています」

 今までの人生を振り返り、移住に後悔はない。

「東京はたまたま芸能界の仕事をしていた場所で、今は北海道でリアルな自分の人生を生きているという感覚。この自分の人生を生きていることが大事で。北海道に移住して、きちんと生活して子育てしているということが、今の自分にとって一番の自信につながっていることなんです」

 慣れない土地で、幼稚園でのママ友をつくることから始まり、ご近所付き合いやPTAの活動などにも積極的に参加。少しずつ生活の基盤となる関係を築いてきた千堂さん。

「家族総出で雪かきをやったりしますよ。ただ、今年は局地的な集中豪雪だったし、やってもやっても間に合わなくて(笑)。歩道に雪山があるので、人も車道を歩くしかない場所もあって、本当に危なかったり。“雪国あるある”とはいえ大変でした」

 冬になれば地面を踏みしめながら雪かきをして、夏は菜園で草刈りをする。家族みんなで暮らす家はクーラーもなく、千堂さんが“古民家”と呼ぶ昔ながらの一軒家。そんな家で中3になった子どもの進学問題を夫婦で話し合う。その普通の暮らしがかけがえのないものになっている。

「北海道に来て11年住んで、子どもたちや家族のおかげで新しい自分を発見したり、新しい自分にバージョンアップした感覚です。私にとって本当にいいタイミングで、ここに来たんだろうと思いますね。自分の人生、もちろんいいことばかりではなかったですが、それも含めて考えたとき、よい人生を着実に今、歩めているのかなと」