歌は世につれ世は歌につれ─ではないが、カプセルトイも世につれだろう。カプセルトイが市民権を得ていく背景には、その時代に必ずエポックメーキングな商品と、新たな舞台装置が登場していることがわかる。
ブームではなく必然的な盛り上がり
小野尾さんは、「ガチャガチャはブームではなく必然的な盛り上がり」と話す。
「一過性のブームではなく、ガチャガチャにはそれだけ可能性があるということ。日本にはくじ文化があって、ミニチュアのものを好むといった独自の文化もあります。また、100円硬貨があることも大きい。
アメリカは1ドル札になるので、ガチャガチャのような文化は広がらなかった。ガチャガチャは、極めて日本的なカルチャーなんですね。最近は、旅行券や食事券が当たるガチャガチャも増えています。今後は、体験を生むようなガチャガチャが増えていくのではないか」
珍しいカプセルトイを見かけると、ついついハンドルを回してしまう。ハズレを引いても妙な満足感が得られるのは、あの小さなカプセルの中に夢やアイデアが詰まっているからだろう。
取材・文/我妻弘崇
小野尾勝彦 一般社団法人日本ガチャガチャ協会代表理事、株式会社築地ファクトリー 代表取締役。1994年ガチャガチャメーカーの株式会社ユージン(現タカラトミーアーツ)に入社し、数多くの商品開発を手がける。現在はガチャガチャビジネスのコンサルティングや商品企画などを行う。著書に、『ガチャガチャの経済学』(プレジデント社)がある