“命懸け”のキノコ狩り

自身の攻撃をかわしながら熊に反撃している(YouTubeチャンネルより)
自身の攻撃をかわしながら熊に反撃している(YouTubeチャンネルより)
【写真】「太ももと腕を負傷しました」熊に対して木の棒で立ち向かう“衝撃”の一部始終

 まさしく“命懸け”のキノコ狩り。動画を見ると、わずか20~30秒の短い間だが、始終攻撃をかわしながらも自身も攻撃を続けている。生きた心地がしなかったことだろう。

 攻防の末、母熊は去っていったものの、噛まれて大怪我をしてしまった『原生林の熊』さん。傷は深かったものの、治療もあってか数日で仕事に復帰できたそう。

無我夢中だったので噛まれた瞬間は痛みを感じませんでした。破傷風になるといけないので、病院に行き治療。骨は無傷でしたが、太ももと腕を負傷しました(牙痕3・爪痕1・擦り傷3)。

 牙は斜めに2~3センチほど、深く入っていましたね。2日ほど患部洗浄・化膿止め・破傷風予防・点滴の処置をしてもらい、3日目には仕事に戻り山に入っていました。出血も3~4日は包帯に滲むほど出ていましたが、一週間もたったころにはすっかり血も止まっていましたよ

 しかし突然熊が突進してきても、普通の人間なら腰が引けて最善の方法を冷静に判断できないかもしれない。勝因は何だったのか?

「私は山での仕事が長いので、クマに襲撃されそうになったら絶対“先制攻撃”をすると決めて、いつクマに出会ってもいいように常にシミュレーションしていました。周りにも『お前はいつかクマに襲われる』なんて言われてましたしね。だから、クマがいると気づいた瞬間、すぐに対応できたんだと思います。クマに背中を向けなかったこと、倒れなかったこと、諦めなかったこと、気迫だけは負けないという強い気持ちがあったから大事には至らなかったのかも」

 また、性格が比較的穏やかな熊だったことで、少し噛みつかれただけで済んだことも幸いしたと分析しているようだ。

「クマは非常に頭がいい生き物。個体ごとに性格も異なり、なかには噛みついたまま頭を振ったり、覆い被さって目を狙ったりするクマもいるんですよ。実際に被害にあって大怪我をしたという話は聞いたことがあります」