「この人はお金のために結婚したんだ」と気づく

「母と妹は父の寮に泊まるけど、私と娘は人目があるからダメ、ということです。けれど現地に着くと、『もういいから。泊まっていきなさい』と許してくれた。胸がいっぱいでした」

 結婚式は挙げたものの、夫は日本のビザがない。日本と韓国の遠距離婚が続く。

「ソジュンのために“チョンセ”で韓国にマンションを借りました。チョンセとは月々の賃料のかわりにマンションの半額を保証金として納める韓国の賃貸システムで、大家さんはそのお金を銀行に預けて利子で元手を増やします。

 私が借りた1LDKのマンションは売値が1400万円ほどで、その半額にあたる約700万円をチョンセで納めました。それでソジュンは月々の家賃を払わずに済むというわけです。

 ところがあるとき韓国に行くと、彼が勝手に引っ越していた。お金がなかったのでしょう、チョンセを解約して保証金を手に入れていた。そのあたりからどんどん彼の態度が変わっていき、しまいには行方がわからなくなってしまった。私もようやく“この人はお金のために結婚したんだ”と気づかされました」

 別れるには裁判にかけるしかない。けれど夫の行方はわからず、居所を突き止めるまで1年を要した。

「離婚の意思を伝えると、彼から脅迫めいた電話が毎日のようにかかってくるようになりました。『離婚届に署名はしない。お金を送れ!』とギャンギャンわめき立ててきます。

 韓国の裁判所で久しぶりに夫と顔を合わせました。裁判官に『結婚を続ける意思はありますか?』と聞かれ、『物理的に無理です』と答えています。そこでソジュンがゴネて口答えした。コイツと別れたら食いっぷちがなくなる、ということです。すると裁判官がキレて、彼を怒鳴りつけた。

 韓国の男がヒモのようになっているのを見て、恥ずかしかったのではないでしょうか。女性の裁判官でした」(次回に続く)

<取材・文/小野寺悦子>