「まるで目の前に明菜がいるような新鮮な感覚でした」
「久しぶりに明菜の歌声を聴き、昔コンサートへ行ったときのことを思い出しました。コンサートでは、初めて耳にする曲を、明菜がいっぱい歌っていたのを覚えています。
新たに声を吹き込んで、ある意味では新しい歌なわけですよね。ラジオからではあるけれど、コンサートで生歌を聴いているような……まるで目の前に明菜がいるような新鮮な感覚でした」
妹を身近に感じたことを明かし、笑みをこぼした。
「実は明菜の歌で『北ウイング』が一番好きなんですよ。情景が浮かぶのと、女性の一途な思いが描かれていて」
同曲は、海外へ行ってしまった思い人を、女性が飛行機に乗って追いかける歌。明菜は当時、恋人だったマッチこと近藤真彦のことを思い、歌っていたのかもしれない。
「明菜も一途でしたからね。“今度、ウチに呼んでもいい?”と明菜がマッチを実家に連れてきたんです。“何か飲み物はいる?”とか“暑くない?”って、明菜はマッチのことを常に気遣っていて、本当に好きなんだなって感じていました。けれど、あんなことになってしまって……」
明菜がデビュー当初から出演していた歌番組『ヤンヤン歌うスタジオ』(テレビ東京系)での共演をきっかけに、ふたりはほどなくして交際を始める。しかし、'89年に破局。ここから明菜の人生の歯車は狂い始めた。兄は、
「ふたりが付き合ったことを家族みんな“よかったね”って、喜んでいたんですけどね」
そう、呟いた。