長期に慢性化して神経性過食症に移行も

 摂食障害を患う芸能人の中には若くして発症し、長く病気と闘うケースも少なくない。モデルのマリエは摂食障害との10年を超える闘いを自身のインスタグラムで明かし、「炭水化物が怖くて食べられなかった。やっとおにぎりが食べられるようになった。こんな毎日が来るなんて」と報告している。

「若いころにきちんとした治療を受けていないと慢性化することがある。低年齢で神経性やせ症を発症してそのまま治らず、神経性過食症に移行する人も増えています」

 摂食障害の身体への害は大きく、栄養失調はもちろん、生理不順や無月経、低身長、脳の萎縮、骨粗鬆症などさまざまな問題を引き起こす。

「アスリートの人たちの疲労骨折の多くがそう。特に目立つのがフィギュアスケートの選手や新体操選手、マラソン選手など。彼らは痩せすぎていますから、簡単に折れる。あれはやはり低栄養だから」

 元フィギュアスケート選手の鈴木明子も摂食障害に苦しんだ一人。18歳のとき拒食症を患い、48キロあった体重が3か月で32キロに激減した。競技生活から一時離れるも、休養で健康を取り戻している。

 身体への害はもちろん、摂食障害でより深刻なのは精神面へのダメージだ。

「神経性やせ症の場合は痩せ願望が成功しているからある意味達成感がある。けれど過食症になると体重が増えてしまうので、達成している感覚がない。結果、神経性過食症の自殺率が高くなっています」

 一歩間違えば命にかかわるのが摂食障害という病。家族や大切な人が摂食障害を患ってしまったら、周囲の人間はどう対処すればいいのだろうか。

「いきなり精神科や専門の病院に行くのはハードルが高い。まずはかかりつけの医者に相談すること。そこから第2段階として専門の病院に進むこともできる。

 治療は身体的な治療と心理的な治療の2つで、痩せ願望がなくなるというのが最終的な完治になる。そのために大切なのは早期治療。気づいたら早めに医療機関を訪れましょう」

作田亮一●獨協医科大学 特任教授 埼玉医療センター 子どものこころ診療センター長。著書に10代のための もしかして摂食障害? と思ったときに読む本などがある

(取材・文/小野寺悦子)