生配信のチャット欄は日本語で埋め尽くされて
「国内で放送がなかったため、生配信のチャット欄には日本語のコメントで埋め尽くされていました。そのなかには“感謝”を示すスーパーチャットを送る人も。違法配信していたチャンネルの同時視聴者数は多いところで10数万人が集まり、YouTubeだけで全体で30万人は下らない人がシリア戦の違法配信を見ていたことに。YouTube以外も含めたら、さらに多い数になるでしょう。しかもその大多数がおそらく日本人。国内から視聴できる正式な配信もあったのですが……」
放映権等の権利関係をクリアにした海外の配信はあり、それは日本国内からも視聴できた。有料ではあるが。
「『Fanseat』というスポーツ系のサブスクによって有料で配信がなされていました。1試合ごとに買い切りができて、シリア戦の視聴はペイパービューで4.5ドル。違法配信を嫌ってちゃんとこちらでお金を支払い試合観戦した人も少なからずいました」
しかし……。誰だって金は惜しい。払わずに済むなら払いたくない。それは人間としての心情か。冒頭のように多くの人はYouTubeの違法配信で、久保の美しいミドルを、伊東純也のチャンスメイキングとアシストを、上田綺世のストライカーらしいゴールを“目撃”した。
「不当な放映権の吊り上げはいかがなものかと思いますが、サッカーもテレビ放映も結局はビジネス。お金がないと成り立たない。“違法でもなんでも見られればいい”、“正式な配信があろうがお金がかかるなら、無料の違法配信を選ぶ”という人が多ければ、さらにどんどん試合の放映が難しい状況になるかもしれない。悲しいのは、今回の試合は平日の深夜にキックオフだったわけです。ワールドカップであったり、その出場が決まるような試合ではない。すなわち生での視聴層はある程度のコアなサッカーファンが中心だったでしょう。一般の人よりサッカーに興味があるだろう人たちがこのような態度だった」
“ここで見られる”という違法配信の共有・拡散はSNSで散見された。そして違法配信を楽しんだのは一般のサッカーファンだけではない
「日本サッカー協会やJリーグとも仕事をしている名物キャスターのジョン・カビラさんも“怪しいサイト経由で応援ネット観戦中!!”などと拡散していました。確かに違法といえるのは放映権や著作権を無視して勝手にアップロードする配信者であって、配信を視聴者が見るのはまた異なる話かもしれません。ただサッカーに関わる人が堂々と悪びれず拡散するのは……。少年たちに教えるサッカー指導者にも拡散している人が多く見られ、子どもたちに何を教えられるのかと。
サッカー関係者以外にもフォロワーが万単位おり、立場や所属を明らかにしているビジネス系アカウントなども平然とポストしていましたが、リテラシーはどうなっているのかと。民度が低すぎると言わざるを得ないですね……」
“史上最強”といわれる国の代表たちの応援。正直者が馬鹿を見る──でいいのだろうか。