想像しやすいから意味が伝わる!

 和製英語の魅力のひとつは「想像のしやすさ」にある、とアンさん。

「例えば、乳母車を英語に訳すと『stroller』という単語になりますが、strollerと聞いても、なかなか乳母車は想像しにくい。でも、同じ意味を持つ和製英語の『ベビーカー』は、ベビー(赤ちゃん)とカー(車)の組み合わせによって乳母車を連想できるし、発音も聞き取りやすい、とても素敵な言葉だと思う。

 何より、和製英語は種類が豊富ですよね。ベビーカーのように2つの単語を組み合わせるパターンもあれば『smart phone』を『スマホ』と略すパターンもある。それぞれにルールが違っていて、興味が尽きません」

 また、アンさんは、J-POPの歌詞に出てくる英文や、英語を使った日本企業のスローガンも和製英語に分類しているという。

「私が大好きな企業スローガンのひとつに、ヤマダデンキの『For Your JUST』があります。日本語で『あなたの暮らしにちょうどいい』という意味で使っていると思うんだけど、これは英語を話す人が見ると、不完全で違和感が半端ない文章なの。

 でも、ヤマダデンキのターゲットは日本人なので、日本の人に伝わればOK。フレーズがカッコいいし、何より意味が伝わる。相手に意図を伝えるのがコミュニケーションのゴールなので『For Your JUST』でベストなんです」

 そのほか、名詞や外来語に“る”をつけて動詞に変換する進化系和製英語にも興味がある、とアンさん。グーグル検索を表す「ググる」をはじめ、メモを取るときに使う「メモる」も、進化系の和製英語だという。

「タピオカブームのときは『タピる』という言葉が生まれましたよね。タピオカは外来語ですが、そこに“る”や“り”をつけるだけで、タピオカを知っている日本人は『タピオカを飲む』という意味だとわかるのが、本当にすごい!

 以前、娘たちがタピりたいと騒いだときに『あんたたちはタピりたいやろうけど、ママはタピりたくない。でも、あんたたちがどうしてもタピりたいならタピらせてあげる』と、言葉遊びをしていました(笑)」

 外来語を日本語で変換すると、和製英語になる。彼女は、こうした日本語特有の柔軟さから「日本人の豊かな想像力」を感じるという。

「日本人に対して『想像力がない』『暗記してばかり』というイメージを持っている外国人は少なくないです。でも、自由な発想から生まれる和製英語や、日本の若者が考える言葉はとっても独創的。私は毎日、新しい和製英語の誕生を待ち望んでいるんです」