ネットで大盛り上がり、その正体は?
この「ゆうれいが手持ちポケモンとして加わる」という内容の幻のソフトは、前述したように2000年代後半には噂されており、ポケモンファンのなかでは入手を試みる人も現れたが、その全容は明らかになっていないままだった。
そのためSNS上では、この恐怖のソフトの存在に阿鼻叫喚の声が広がっていたのだ。
《特級呪物(ガチなやつ)》
《本当にあった怖いポケモン》
《ぎゃあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ》
一方で次のような興味深い声も少なくなかった。
《都市伝説だと思ってたらまさか本当に存在していた…!?》
《これ怖いやつですよね?都市伝説の!見つけるなんてすごすぎます》
《ポケモン、ゲームボーイ、都市伝説が好きな人間からしたらまじで欲しい》
幻の存在だったソフトが、突如Xにて登場したのだから、これだけネット上で盛り上がるのも頷ける。
果たして、その正体とは?
“都市伝説のソフトそのもの”ではない!?
実はこの「POKEMON CREEPY BLACK」は、「ハックロム」と呼ばれる改造済みのロムファイル。市販のゲームソフト=ロム(ゲームのプログラミング)を専用の機械でPCに吸い出し、パッチを適用させるなどして改造を施したゲームのことだ。
ハックロム自体はゲーマーたちの間ではメジャーな存在であり、ポケモン以外の人気ゲームでも改造を施された例は枚挙に暇がない。YouTubeやニコニコ動画などのプラットフォームでは、実況動画としてプレイされる機会も多く、昔ながらのネットユーザーのなかには懐かしむ人もいるかもしれない。
「POKEMON CREEPY BLACK」は、パッチを当てたロムファイルを再びカートリッジに焼き直したものであり、それが流通して冒頭の投稿者の元へと渡ったのだろう。
しかし、これが“かつて噂されていたソフトそのものなのか”という疑問に関しては、可能性は低いと言える。
なぜなら今回Xで話題になったソフトのデータは、2021年ころから海外の有志によってリリースされたと推察されるからだ。
噂はそれよりもっと以前の2000年代後半からあったため、「都市伝説をもとにファンが出来心で作った模倣品」と考えるのが妥当だろう。なおソフト自体は、パッチ開発者以外の第三者がカートリッジに焼いて販売しているのだと思われる。
ほかにもファンメイドの類似ソフトの情報もあるため、今後も「POKEMON CREEPY BLACK」のようなソフトが出てくるだろう。多くは今回のような「都市伝説をもとにファンが出来心で作った模倣品」だろうが、もしかしたらいずれ、かつて世間を震撼させた“本物”も出てくるかもしれない。
余談だが、12月11日現在、このソフトの投稿者のアカウントは削除されており、本ポストを確認することはできない。ゆうれいが放ったのろいは、投稿者自身も消えてしまうほど強力なものだったのだろうか……。
(取材・文=A4studio)