今回の件を受けてスポンサー企業は、旧ジャニーズ事務所との契約更新をしなかったり、タレントとの直接契約に切り替えたり、といった対応に追われた。性加害という人権侵害があった会社との取引継続はリスクがあると判断されたためだ。
視聴者のタレントに対するイメージが下がっていないとしても、今後広告を出稿する企業は取引先の「人権尊重」が一層求められることになる。
業界動向について、ある芸能関係者が語る。
「ボーイズグループはこれまでジャニーズの寡占状態だったが、その牙城を切り崩そうと、各プロダクションは躍起だ。トップセールスでテレビ局に自社タレントの売り込みに走っている。
CMを出すクライアント側は騒ぎが収束すれば、本音ではジャニーズタレントの解禁に踏み切りたいのでしょうが、不祥事の影響は大きいのでは。今はいつ収束するかをじっと注視している段階だ」
「テレビ出演やCM起用はプロモーション的要素が強かった」
旧ジャニーズ事務所も長く取材した日刊ゲンダイの米田龍也・芸能編集部長に聞いた。
「当面の動きは被害者への補償がどうなるか。事務所への在籍証明があれば補償するというが、それ以外の被害申告も相当あるだろう。どう線引きするのか、容易に収拾つかないのではないだろうか。また新会社のエージェント制度。実力のあるタレントは他に移ってもやっていけるだろうが、若手の中にはマネジャーがいないタレントも出るのでは」
「旧ジャニーズ事務所の経営にとって、テレビ出演は実は最重要ではなかった。ファンクラブの会費、ライブ開催、それに伴うグッズ販売だけで売り上げの多くを占める。テレビ出演やCM起用はプロモーション的要素が強かった」
旧ジャニーズ事務所の問題は決して許されるものではないが、ビジネスモデル自体はよくできていると思う。ファンの会費収入だけで年間400億円以上と推定する見方もある。ファンを大事にしており、かつて東日本大震災の際は、当時のメリー喜多川副社長自ら被災地のファンの安否確認をしていた、というエピソードもある。
米田氏はこうも指摘していた。「この問題を機に芸能界は古い体質を変える必要があるだろう。内輪のファンを相手にしたこれまでの『興行』的な意識から、世界市場を狙った近代的なショービジネスを志向する世代へと経営変革しなければ」。
ジャニーズ新会社「STARTO ENTERTAINMENT(スタートエンターテイメント)」の代表取締役CEOに就任した福田淳氏は、ネットメディアのPIVOT公式チャンネルで次のように抱負を語っている。
「どのグループとは言えないが(所属タレントは)まあすごい踊りしますね。全然(海外で)知られていない。アジアの市場とか飛びつくんじゃないかという人ばっかり。日本人として誇らしい形で(海外で)デビューできると期待しており、グローバル展開が可能だと思っている。昭和が終わって21世紀になって(日本は)20年ぐらい出遅れましたが、一発ヒットでまあ取り戻せますよ」
関根 心太郎(せきね しんたろう)Shintaro Sekine
CM総合研究所 代表
1973年生まれ。1999年株式会社東京企画/CM総合研究所に入社。システム開発・データベース構築の責任者を経て2014年より現職。消費者3000人を対象としたCM好感度調査を中心に、テレビCMの広告効果測定および研究分析を実施。このほか企業へのコンサルティングや情報提供を通して、広告活動の最適化に向けた課題解決のサポートを行っている。