大阪市としては140か所という目標の達成は可能と見込んでいるのだろうか。
「市内全域での道路、公園、広場等の公共の場所での喫煙を禁止することになれば、喫煙者の方にはこれまで以上に制限をかけることになるので、それまでにマナーを守って喫煙できる場所の確保をする必要があると考えています。
2か年の整備計画をもとに進めていますが、設置場所の調整や整備に向けた手続き等で、令和6年度の整備件数が多くなります。事業の進捗状況を確認しながら、140か所の整備に関しては、間に合うようにしていきたいと考えています」(大阪市担当者)
喫煙所設置に加えて日々のパトロールも効果的
他の自治体に目を向けると、喫煙所の増加はマナー向上や街の美化にも貢献しているようだ。京都市では平成20年から禁止区域での路上喫煙に1000円の過料を科すとともに、現在までに市内19か所の公設喫煙所を整備。喫煙所の増加に伴い、過料件数もピーク時は平成24年度の6794件だったが、令和4年度は358件に減少している。
先の千代田区担当者は、路上喫煙のパトロールも効果的であると語る。
「千代田区が路上喫煙を禁止し、違反行為に対して罰則を科す生活環境条例を全国で最初に制定してから本年度で21年となります。黄色いジャケットがトレードマークの生活環境改善指導員24名が交代で区内全域のパトロールを毎日行っており、区民のみなさんからも温かい励ましの言葉をいただいています」(千代田区担当者)
一方で、喫煙所の増加に伴って問題がすべて解決しているわけではないという。千代田区はビジネス街、商業娯楽施設、大学・専門学校などが集まり、昼間人口は80万人を超える。改正健康増進法や東京都受動喫煙防止条例の施行以後、喫煙者数に比べて喫煙場所が不足しており、設置場所にも地域的な偏りがあるのが現状だと話す。
「また、昨年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行後、秋葉原や有楽町等、繁華街への来街者や外国人観光客が急激に増加しています。その結果、路上喫煙の過料件数や苦情件数は増加傾向にあります。千代田区では、今後も引き続き、路上喫煙対策と公衆喫煙所設置対策の両面で取り組みを推進していきます」(千代田区担当者)
外国人や観光客に喫煙マナーを周知させていくという新たな課題も生まれているようだ。千代田区の取り組みから、喫煙所を必要な場所に必要な数だけ設置するというハード面だけでなく、指導員というソフト面も重要だということがわかる。
万博以後も見据えて、大阪市も一歩踏み込んだ対策が求められているのではないだろうか。