にもかかわらず、今年初登場となった『モーニングショー』では意外なことを口にした。男性更年期障害の話題で、自身も40歳のときに経験したと告白。ストレスがよくないようだ、としたうえで、
「僕はたぶん合ってないんで、仕事が。芸能界の仕事やってるときが、やっぱいちばんストレスかかりますね」
と、主張したのである。
これを裏づけるように、一昨年暮れの『出川一茂ホラン☆フシギの会』(テレビ朝日系)でもこんな発言が。
「みんなと違って、自分の芸に能力がないと思っているから。自分が続くわけないと思ってるわけ」
一茂が視聴率を稼げる理由
これほど成功していても、タレントとしての自信を持てていないのだ。得意なはずだった野球で挫折、芸能界でもかなり無理をしている一茂にとって、ハワイは唯一、ストレスから解放される場所。頻繁に往復することで、一種の転地療養を繰り返しているともいえる。ただ、人間の心は複雑だ。それ以外に、承認欲求みたいなものも関係しているのではないか。
野球を引退後、自分の才能が開花していたらという前提で「清原(和博)クンくらいにはなれていたのでは」と語ったこともある一茂。そこは国民的ヒーローの息子とあって、芸能界に活動の場を移した今もスターでありたい思いは強いのだろう。
自分のスターとしての需要がどれくらいなのか、あえて長く休むことで確認する意味もあるように思われる。天岩戸に隠れる天照大神みたいな感じだ。
そしてもうひとつ、ハワイといえば、父・茂雄とも親しかった石原裕次郎さんがそのブームに火をつけた場所。古い世代の日本人には憧れかつ身近な「海外」でもあった。その地を今も愛し、また、裕次郎さんの甥・良純とも親しい一茂に、右肩上がりだった戦後昭和への郷愁を感じている人もいるのではないか。
つまり、彼と彼を好きな人にとって、ハワイ休暇はウィンウィンなのだ。古い世代が支える今のテレビで一茂が視聴率を稼げる理由は、そのあたりにもある。
宝泉薫(ほうせん・かおる)アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。