これは一体何を映しているのだろうか……。想像するだけで背筋が凍る恐ろしさだが、タニシさんはあくまで楽しげだ。
「思ったんですけど、これって、部屋に現れるといわれていた黒い影が外に出て……。鍵がかかって、帰ってこられなくなったってことなんじゃないかなって。で、部屋に戻りたくて外からインターフォンを鳴らしてる。そう思ったらちょっとかわいいですよね(笑)」
タニシさんならいざ知らず、やはり、聞けば聞くほど、事故物件には住みたくない。
ところが、2021年、事故物件に関するガイドラインが改正され、孤独死を含む自然死、3年以上前の自殺・殺人が発生した物件については、賃貸契約において事前に新たな居住者にその旨を告知する義務がなくなっているのだ。では、新居を探す際、どうしたら事故物件を見抜けるのだろうか?
「まず、事故物件は絶対に嫌だと不動産業者に伝えましょう。そんなの言わずもがな、と思わず、意思表示をするのが重要。そうすれば3年以内に人が亡くなった物件は紹介されないはずです。4年以上前の事故物件に関しては、『大島てる』という事故物件情報提供サイトを参考に。2005年以降のものであれば、掲載されている物件も多いです」
一方でタニシさんは、「あまり詮索しすぎないことも大切」と語る。
「結局、みんなが事故物件を怖がるから、自分も怖いと感じてしまうんですよね。それはしょせん、作られたイメージ。事実として人が死んでいる場所でも、そのことを知らなければどうってことない場合も多いですから」
超高齢社会の日本に、事故物件は今後間違いなく増えていく。そんなとき、タニシさんのようなマインドで向き合えるか……。さて、あなたはどうだろう?
松原タニシ●1982年兵庫県生まれ。テレビ番組『北野誠のおまえら行くな。』への出演をきっかけに“事故物件住みます芸人”として活動。著書『事故物件怪談 恐い間取り』シリーズ、『恐い食べ物』(共に二見書房)が好評発売中。
取材・文/大野瑞紀