「近年、コロナや自然災害に乗じた詐欺的なトラブルの相談が増えています。シニア層がターゲットにされやすく、手口は巧妙化しています」
こう語るのは国民生活センター相談情報部の藤田樹さん。なぜシニアが狙われやすいのか?
「シニア層は『お金』『健康』『孤独』といった不安を抱えています。これら不安を逆手にとり、心の隙間をついてくる悪質な業者が少なくありません。また年齢的に自宅にいることが多いため、電話勧誘販売や家庭訪販による被害に遭いやすいのも特徴です」(藤田さん)
直近では能登半島地震の被災地支援を騙(かた)る事例がすでに寄せられているという。シニアが警戒すべき詐欺手口の最新情報と、トラブル回避策を専門家に聞いた。
困っている人を助けるつもりが
一昨年より急増している「老人ホーム入居権」を巡る詐欺電話のトラブルから。2023年度の相談件数(全国の消費生活センター等に寄せられる統計、以下同)は12月31日時点で2021年度の約5倍にのぼる。
「突然の電話で、『老人ホームや介護施設に入居する権利(=入居権)が当選した。不要なら他の人に譲ってほしい』と持ちかけられるのが典型的なパターンです。
良心から承諾するとその後、業者や弁護士を騙る別の人物から電話が来て、『あなたの名義なので、権利を譲るために一度あなたがお金を振り込む必要がある』と言ったり、『名義貸しは実は違法。承諾したあなたの罪になるのでお金で解決を』などと脅して、言葉巧みにお金を支払わせようとします。
実際、数千万円を振り込んでしまったという相談もありました」(同センター、皆川祐哉さん)
そもそも“入居権”という権利は一般的には存在しないため、そのワードが出たら詐欺の疑いは濃厚に。大前提として、留守番電話機能や発信者番号通知を活用し、心あたりのない電話には出ないようにすることだ。
「『待っている人がいるなら権利を譲ろう』という気持ちになるもの。親切心につけ込むのが手口なわけです。世話好きな人や、困っている人を放っておけないタイプほど騙されやすいといえるので、注意しましょう」(皆川さん)