スーパー従業員らが延焼を防ぐため、ゴミ袋を炎から遠ざけた
スーパー従業員らが延焼を防ぐため、ゴミ袋を炎から遠ざけた
【衝撃の犯行写真】“八つ当たり”放火魔の放火シーン一部始終

 ターゲットは常にゴミだ。墨田区と台東区は隅田川を挟んで隣接するため、放火魔は隅田川を渡って犯行を繰り返したことになる。

 隅田川周辺のホームレスらは「この顔は知らない」と口をそろえる。

 現地生活が20年近くになる墨田区側のホームレス男性(56)は「令和の時代はホームレスも個人主義だから」と語り始める。

ホームレス同士で関わりを持つことに消極的な傾向がある。食事や仕事などの情報交換はしたいんだけど、親密になると人付き合いをしなきゃいけなくなるでしょ。1人でいたいからこういう生活をしているのに、話しかけられたりするのは面倒くさいから」(同・男性)

 隅田川沿いにはかつてブルーシートのテント小屋が無数に立ち並んでいた。2012年のスカイツリー開業に合わせ、ホームレスは居場所を失ってバラバラに散り、現在は墨田区側に3つ、4つある程度だ。

 男性は、容疑者が語る犯行動機を信じていない。

あっちは飯は出るし、あったかいし、雨風をしのげるから

「ゴミに火をつけたって何にもならない。オレは空き缶を拾い集めて得た金で酒を飲むのが楽しみなんだ。1日3食は食べられないけど、寝起きする場所では掃き掃除をして、ゴミも拾ってちゃんとしないといけない。冬は寒いし、たまに若者が面白がって石を投げてきたりする。このヤローと思うけど逃げ足が速いから諦めてるよ。そういうことを我慢できない人は“あっち”のほうがいいと考えるかもしれない。あっちというのは留置場ね。飯は出るし、あったかいし、雨風をしのげるから」(同・男性)

 犯行現場がすべて行動圏内にある台東区側のホームレス男性(60代)によると、

「ここから上野まではゆっくり歩いても40分あれば着く。ただ、上野公園周辺のホームレスは酔っ払いやケンカ騒ぎが多くてガラが悪い。おとなしいホームレスは隅田川両岸のほうが暮らしやすいかもしれない。いまどきのホームレスは身ぎれいにしていて銭湯にも行く。燃えるゴミなんて漁らない。燃えないゴミはまだ使える掘り出し物や骨董品みたいな宝が出てくるかもしれないから見るけど」

 前述した防犯カメラ映像を見ると、内田容疑者とみられる男は犯行の直前、燃えるゴミをじっと眺めたり物色するような動きも見せている。

ホームレスはヤクザじゃないから縄張りなんてない。新顔が自分のテリトリーに入ってきても気にしないし、基本は早い者勝ち。といって燃えるゴミを物色する気にはならないけどね」(同・男性)

 理解しがたい“こじらせ男”による身勝手すぎる犯行だった─。