そしてもうひとつ、プライベート面で不足しているのが「悲劇」だ。同性に支持され続ける女性芸能人には、大失恋だったり、家族の死だったり、そういう悲劇がつきものだったりする。松田聖子や中森明菜、宮沢りえ、安室奈美恵、後藤真希といったあたりがそうだ。もちろん、望んで得られるものではないし、特に広末はそれを望まないタイプだろう。何せ、高校時代には「二兎を追うものだけが二兎を得る」が信条で、

「そのころ、三兎とか四兎くらい追いかけていたので。仕事、夢、友達、恋愛。全部やっていいんじゃないかって」

 と、振り返っている。そういう欲張りな生き方はとかく嫉妬を買いがちで、反動のような悲劇でも起きないと世間は味方しない。

「人生最悪で、いつも高い所に行ってました」

 さらに「とてもプラス思考なので」と自己分析もしていて、こういう人はマイナスなところを見せたがらない傾向がある。最初の離婚をした時期については、

「人生最悪で、いつも高い所に行ってましたね。(略)よく生きていたと思います、私も。運動神経悪かったら、落ちているなとか」

 と、珍しくシリアスな回想もしているが、プラス思考のキャラが強すぎて、深刻に受け止めた人は少なかったのではないか。なお、冒頭のイベントについては《起用する企業、社長がファンとかかな》と皮肉る声や《昔から男ウケだけだった》と切り捨てる人も。ただ、早大の先輩でもある吉永小百合と違い、広末は大学同様「清純派」も中退してしまった印象だ。

 それにしても、不倫騒動の直前にはNHKの朝ドラ『らんまん』で主人公の優しい母親をはかなく演じ、その前年には哲学についてのエッセイを出版と、絶好調だった彼女。そんなときにこそ、人生の落とし穴が待っている。

宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。