1996年、NHK紅白歌合戦で『ガッツだぜ!!』を披露したウルフルズ・トータス松本
1996年、NHK紅白歌合戦で『ガッツだぜ!!』を披露したウルフルズ・トータス松本
【写真】「似てるって言われる」トータスが公開した“やらかし”歌舞伎俳優とのツーショット

 一方、トータスのファンはそんな彼の「情けない」ところも好きなのだろう。

 実際、それが生かされることもある。2020年度後期のNHK朝ドラ『おちょやん』にヒロイン・千代の父・テルヲ役で出演。酒と博打に溺れ、それこそ「借金大王」となって娘に迷惑をかけまくる姿が「朝ドラ史上最悪の毒親」とまで呼ばれ、強いインパクトを与えた。本人は、

「テルヲ出てくんなって言われたらわかるんですけど、トータス出てくんなって言われるとへこむんですよね。俺じゃないねんけどって」(『あさイチ』NHK総合)

 と、こぼしていたが―。

国を相手に「借金大王」と化した

 今回の事件で、カネにも人間関係にもちょっとルーズなことが判明。ある意味、ハマり役だったわけだ。ちなみに『借金大王』ではその友人に対し「嫌いになれない」とか「変わるなら今だ」とも歌っている。そこからくみ取れるのは“ダメに見えてもみんないいヤツ”的な人間観であり、ファンはそんなところに元気づけられるのだろう。

 ただ、彼が1億円超の不正受給をした会社の会長だった事実は揺るがない。いわば、国を相手に「借金大王」と化してしまったのだ。カネにだらしない友人を説教する曲まで作っていた彼にとって、さすがにへこまざるを得ない状況だと考えられる。

 とはいえ「何も知らなかった」が本当なら、それほど良心の呵責も感じないタイプなのではないか。自身のラジオ番組では「心底、反省しています」としつつ、

「いつものように底抜けに明るくとはいかないかもしれませんが(略)今日もしっかりお送りしていきたい」

 と、通常運転をアピールしていた。

 なんだかんだいって『ガッツだぜ!!』の精神ですぐに立ち直りそうだ。

宝泉薫 ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。