当時の作品を見た西丸さんは、真っ青な顔色をしている自分に驚いたという。
「ヘモグロビン値が5g/dl以下だと輸血が必要になるらしいのですが、そのころの私のヘモグロビン値は5.2g/dlでギリギリだったんです。そりゃあ、顔色も悪くなりますよねぇ(笑)」
「抗がん剤治療で髪が抜ける前に金髪にするわ」
手術後、すぐに仕事に復帰するつもりでいた西丸さんだが、病理検査の結果、“脈管侵襲ありで中リスク”であることが判明。医師からは抗がん剤治療をすすめられた。
「入院した時点で、“手術を受けたらできるだけ早く仕事に復帰するぞ!”とスッキリした気分になっていたんです。それだけに、抗がん剤治療の話が出たときには戸惑いました。ただ、抗がん剤治療は絶対に受けないといけないわけではなかったんですね。『先生だったらどうしますか?』と聞いたところ、『妻が同じ状況なら、絶対に受けてほしいです』とのことだったので、1週間ほど考える時間をもらうことにしました」
西丸さんは、医師でもある父親にすぐに相談した。
「父に『そういう状況なら、絶対に抗がん剤治療はしたほうがいい』と言われたこともあり、治療を受けることにしました。“こうなったら覚悟を決めて楽しむしかない!”と気分を上げて、病院から帰って3時間後には友達に“抗がん剤治療で髪が抜ける前に金髪にするわ”ってLINEを送ってました(笑)」
そして抗がん剤治療が始まるまでの約1か月間、好きなことを存分に楽しんだ。
「手術で悪いところは取ってしまったし、術後の経過も良好でしたし、大量の出血から解放されたおかげで、すごく元気だったんです。会いたい人に会って、行きたいところに行って、という感じで、遊びまくっていました」
抗がん剤治療は3月上旬から始まった。3週に1度、全6回の投与だ。
「具合が悪くて買い物にも出かけられなくなると思って、食べ物や飲み物をたくさん買い込んでいたんです。でも、全然元気で病院の帰りに寄り道ができるほどでした」
しかし、初回の投与をして3日目から皮膚のかゆみや喘息といったアレルギー症状に悩まされるようになった。その後も抗がん剤治療を受けるたびに、さまざまな副作用が出るようになったという。
「先日、5クール目の投与を終えましたが、かゆみがつらくて。ずっと続くので寝られないし、冷やしたり薬を塗ったりして対処していました。他にも、骨が痛くなったり、吐き気やしびれがあったりもしますが、調子が悪いときにはとことん自分を甘やかしてます。寝たいときに寝て、食べたいものを食べて、とにかくゴロゴロと(笑)」
抗がん剤投与から2週間ほどたつと症状はおさまり、時にはジムでトレーニングをすることもあった。
「抗がん剤治療時の禁止事項を先生に尋ねたところ、特にないと言われて。ただ、免疫力が下がるので、人混みにはできるだけ出かけず、手洗いやうがいなど感染対策をしっかりやってくださいとのことでした。無理しない程度なら運動もしていいと言われたので筋トレも少ししています」