もし、30年前に戻れたとしたら
'94年にドラマ『君といた夏』で俳優デビューして、丸30年になる。もし、30年前に戻れたとしても、やはり俳優の道を歩むと思うかと尋ねると、
「30年前はもう始めちゃってるからね。もう、やらなきゃいけないじゃないですか(笑)。始めちゃったら引っ込みがつかない仕事だから」
では、モデル時代であったなら?
「俳優を始めてなかったら、わからないね。でも、たとえ再び俳優を志したとしても、今のように30年間やれるはずはない。たまたま奇跡的に来ただけの話なんですよ、はっきり言って。そんなの二度とない。1000回繰り返したって絶対無理。こんな奇跡的な運や縁、人に恵まれることなんて、もう二度と無理。僕の事情なんて、本当にちょっとなんですよ。俳優業ってそういうことなんですよね」
30年という長い時間の中で、俳優をやめたくなったことはあったのだろうか?
「毎度!」
意外すぎる答えが返ってきた。
「俳優業が大好きなんて思わない。いろんな人からたくさんのお金を出してもらってやっているから、喜んでもらうことは当たり前なんです、プロだから。それが僕の仕事だから。“絶対に喜ぶ”じゃないとダメなんですよ。趣味でやってるわけじゃないから。趣味だったらやりたいことだけをやって、やりたくなかったら帰ればいいから楽なんですよ。でも仕事だから、僕の好き嫌いなんて関係ないんです。だから、いつもやめたいって思う(笑)」
計り知れない重圧、結果を出し続ける不断の努力。圧倒的なプロ意識ゆえに、逃れたくなるほうが自然なのかもしれない。それでも、やっぱり俳優であり続ける理由は、
「自分の携わった作品を見た人が“元気になった”とか“もう1回仕事頑張ってみようと思う”、“行きたくない学校に行ってみる”とか言ってくれるのを聞くから。それって、この仕事のすごいところじゃないですか。会ったこともない、住む場所も人生も違う人が、自分の出た作品に感動してくれたり、笑顔で劇場を出てくれたり……。そんなふうに思うと“もう1回トライできるかな”って思うんですよね。そうじゃなかったら やらないですよね、こんな大変な仕事」
もう1回喜んでもらえるチャンスがあることに、突き動かされるのだという。
「例えば、僕が急に20キロ太って、髷をつけて出てきたら、お客さんは“わぁ!”って思うのかな、とか。そう思ってもらえたらすごくいいじゃないですか! そう考えるとやってみたくなるんですよ。エンターテインメントって、サプライズだから。でもその後には、もっと大きなサプライズはないかと考え始める。そんなふうにだんだんしんどくなっていくんですけど(笑)」
今後も大沢がくれるサプライズに、期待せずにはいられない─。