“花江ちゃん”がゆったり口調になったきっかけ
衣装合わせのときにはスタッフから“花江ちゃんはやっぱりピンクだよね!”と言われたと振り返る。
「このピンクのお花があしらわれた可愛いお着物を選ぶ子であり、似合う子。そこから逆算に逆算を重ねて、今のしゃべり方になりました。特にしゃべり方のクセを強くしようと思ったわけではなかったんですが(笑)」
そんなたおやかな花江がまさかのブチ切れ(7月9日放送)。子どもたちには“いい子”であることを強要しながらも、あまりに家庭を顧みなくなった寅子に対し、家族の我慢は限界に。花江の強さとやさしさが光った。
「そのケンカというか、気持ちのぶつかり合いに至るまでの花江ちゃんは“なんで親友なのにトラちゃんに言いたいことが言えないんだろう”と思っていて。私も“花江ちゃんって、こんなに我慢する子だっけ?”と思ったんですが、監督から“これは親友のケンカではなく、夫婦ゲンカです”と言われて腑に落ちました。
“働きに出てくれているトラちゃんを、妻として私が支えなくてはいけない”と気持ちにふたをし続けて。親友とのケンカだったら一歩踏みとどまれるところを、本当に気を使わず言ってしまう部分も夫婦ゲンカっぽいなと思いました。
朝ドラは長丁場の撮影だからこそ、花江ちゃんとトラちゃんの関係性もどんどん変わっていって戻ったり、離れたり。普通のドラマや映画だったら、その関係性の一瞬を描いて終わりなんですけど、“その一瞬の後にどうなるのか”まで演じられるので、すごく人間らしいなと思っています」
多くの人が森田望智という女優を知った作品は、おそらく'19年8月に配信が始まったドラマ『全裸監督』(Netflix)だろう。以後、あちこちの作品に引っ張りだこ。そんなブレイクから今夏でちょうど5年がたつ。変わったこと、変わらないことを尋ねてみると、
「お仕事に向かうときの私自身の気持ちはまったく変わっていないと思います」
と、凛とした表情。
「毎年、いろんな素敵な方との出会いがあって。“こんな方もいらっしゃるんだ”“こんなお芝居の仕方があるんだ”と知り、すごく世界が広がった5年間でした。私の思い描く未来像に重なるような人たちに出会えたことはとても大きくて。人として、人にどうあるべきか。そんなことを学ばせてもらったような気がしていますし、きっと今後の5年につながるのではないかなと思っています」
忘れられないシーン
義母・はる(石田ゆり子)が亡くなり、ずっとつけていた日記を希望どおり寅子とともに燃やすシーンを挙げてくれた。
「“私のお母さんが、お母さんでよかった”とあふれる思いを話すトラちゃんの肩を私が抱く……というのが台本上でした。ただそのあと、ふたりでアドリブで2分くらいお芝居を続けたものが、放送でも使われていました。
沙莉ちゃんとだからこそ出た自然な気持ち、半年間撮影を続けた中で生まれたものだったと思います。花江ちゃんとトラちゃんを超えて、私と沙莉ちゃんの気持ちが通ったようなシーンでもあって、すごく印象に残っています」