シーズンを中断するのは可能なのか。スポーツライターの小林信也さんはこう話す。
「東京五輪のときに日本のプロ野球が中断したように、メジャーリーグも1週間ほどの中断であればまだ現実的です。そうなればメジャーリーガーの参加も可能だと思います」
カギを握るのは“賭博”と“プライド”
現地の報道ではシーズンを158試合に減らす案も検討されているという。だが、試合数が減れば、2つ目の問題が発生する。
「試合数が減少した場合、162試合を前提で契約している選手の年俸をどうするか、という問題があります。2020年のコロナ禍で試合数が減った際、年俸の比率を巡ってMLBと選手会側が対立したことがあります。試合数が減れば、その分、球団の収益も減りますが、年俸が減ることに納得のいかない選手も出てくるでしょう」(前出・在米ジャーナリスト、以下同)
3つ目の課題はスポーツに付き物であるケガ。それも球団の懐事情に絡んできて、選手の派遣を嫌がる要因になる。
「WBCでは、各球団が所属する選手のケガに備えて、保険に入る必要がありました。保険料は各選手の故障歴や年俸などで異なり、高額な保険料に球団が難色を示したことで、WBC出場を断念した選手もいました」
年俸や保険など金銭的な事情も絡んできそうだが、説得材料があるという。
「アメリカではスポーツの結果で賭けをするスポーツベッティングが盛り上がっており、約10兆円の規模になっています。メジャーリーグも賭けの対象で、売り上げから一定の割合が分配されます。五輪で注目され、世界中の人が賭けるようになれば、メジャーリーグとしても収益が増えるので、五輪に対する力の入れ方が変わるかもしれません」(小林さん、以下同)
アメリカ・ロサンゼルスで開催されることもあり、大谷の存在が“野球の母国”を本気にさせるかもしれない。
「アメリカは国の威信をかけて金メダルを取りにくるでしょう。“日本にはメジャーリーガーを出さないと勝てない”とWBCを通じてアメリカは認識しているのでは。大谷が参加したい意思を表明すれば、アメリカも本気のメンバーで挑んでくるかもしれません」
G.G.佐藤氏も野球界全体のことを考え、メジャーリーグも含めて、全力でロス五輪を盛り上げる必要性を説く。
「野球の世界的な普及のため開催国がどこであれ実施されるようにならないといけないと思います。そのために魅力をアピールする必要があります。“WBCがあるから五輪はやらなくてもいい”とあぐらをかくのではなく、野球界が一致団結して、これまでとは違うものを見たいですね」
笑顔でゴールドメダルをかける大谷も見てみたい!