役作りの苦労

 ニコニコと明るく、どこか笑い上戸の土居。役とは大きなギャップがある。普段の声はよねよりも2オクターブほど高く、可愛らしい。

「よねという人には意志の宿った声、力強い声が似合うと思ったので。その声は家でひとりでしゃべりながら探りましたね。新潟編の間、撮影が空いて。久しぶりによねを演じるとき(声の)チューニングがよくわからなくなっちゃって。低すぎて悪魔のような声が出たり(笑)

 長かった髪も、よねを演じるためにバッサリ。

「髪はショートヘアの役がきたときのために伸ばしていたので。むしろ“ありがとうございます!”と喜々として切りました。今ではスーツ姿の自分のほうが見慣れている感じで、周囲からも“カッコいい”“似合ってる”と言ってもらえるので、自信になりますね」

「一緒にやらないか。弁護士事務所」と、よね。轟と固い握手を交わす名場面(『虎に翼』51話)(c)NHK
「一緒にやらないか。弁護士事務所」と、よね。轟と固い握手を交わす名場面(『虎に翼』51話)(c)NHK
【写真】『虎に翼』男装姿で存在感、“山田よね”の名シーンたちを振り返る

 よねは司法試験の筆記をクリアしても、口述で落ち続けた。しかし、ついに! 弁護士資格を手にした。

「台本を読んだときはもちろんうれしかったです。いちばんグッときたのは20週(8/12~)から着る新しいスーツに弁護士バッジをつけてもらったとき。ちょっと泣きそうになるくらいうれしくて。何十年越しの夢が叶ったというか。そして、こんな気持ちになるんだなと思って。よねとすごく気持ちがリンクした感じがしました」

 じゃんけんで決まった新たな事務所名は“山田轟弁護士事務所”。よねと轟(戸塚純貴)の男女を超越した友情について尋ねると、

「本当に相棒ですよね。轟の前では、よねもちょっとカッコ悪いところを見せられる。トラちゃんにはそれを見せないように振る舞っているので。そういう意味では安心できる相手。よねに轟がいて本当によかった。戦後の再会時、よねから“一緒に事務所をやろう”と轟を誘ってはいますけど、あれはよねも轟に救われたんだろうなと思います」