「実はNHKも含めた、地上波テレビ局による選挙報道の時間は減っていると言います」とは、選挙事情に詳しい政治ジャーナリスト。
テレビ局による「選挙報道」は特定の候補者の当選落選、各党の選挙の勝敗を左右しかねない、有権者に大きな影響を及ぼすことがある。そのため公示日を境に、各局に求められるのは、公職選挙法や放送法に基づいた「政治的に公平である」報道だ。
「たとえば党代表や候補者の演説、スピーチを番組で扱う際には時間を平等に測る、といった細心の配慮を怠らない局もあるそうです。番組キャスターが“すみません、お時間になりました”と、途中で切り上げるシーンを見たこともあると思います。
また特定の政党を支持する視聴者からも、少しでも偏った報道をすると“なんで◯◯党ばかり”などの苦情やクレームが入れられることも」(前出・ジャーナリスト、以下同)
「電波停止を命じる」“政治的圧力”
2016年には当時、総務大臣だった高市早苗氏が衆院予算委員会で、「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返し、行政指導しても全く改善されない場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにはいかない」と発言。
政府が公平性ではないと判断したテレビやラジオの放送局に対して、「電波停止を命じる可能性」について言及したもので、これが“政治的圧力”、“報道の自由を萎縮させる”“国民の知る権利を損なう”として指摘する声も広がった。
「もちろん本来は選挙に関しても自由な報道は認められているところで、2017年にはBPO(放送倫理・番組向上機構)が《求められているのは出演者数や露出時間などの量的公平性ではない》との見解を示したように、露出時間の制限もありません。
選挙報道に求められるのは《事実を偏りなく報道し、明確な論拠に基づく評論をする質的公平性》としていますが、各方面から“声”を向けられての“自粛”が現実ではないでしょうか。
それに投開票はともかく、選挙報道は視聴率もあまり期待できないと聞きます。ならば波風を立てず、数字が見込めそうな大谷投手に偏るのは必然のことで、各局にとってはまさに“救世主”なのだと思います」
全国各地で行われている期日前投票は、前回の衆院選挙と比較して軒並み減少傾向にあるという。政治、選挙に無関心な国民が少なくない現状が招いた“大谷ハラスメント”でもあるわけか。