謎のふわふわモコモコキャラに癒される
1位に輝いたのは、『火垂るの墓』と同時上映だった『となりのトトロ』(1988年)。
「日本の風景や暮らしが、外国人にもよく伝わる映画だと思う」(東京都・69歳・男性)
「ほのぼのとして夢があって可愛らしい」(神奈川県・60歳・女性)と、子どもから大人まで誰もが楽しめるストーリーで、不変の人気を誇っている。
「本当の日本の原風景は、“千と千尋”ではなく間違いなくこちらよね。今もこの懐かしい景色は、日本中のあちこちにありますから」
トトロそのものがすでにスタジオジブリのアイコン的存在になっているが、そもそもトトロは何者だったのか。映画の中でははっきりと示されておらず、それが物語の神秘性を高めている。
「森の妖精なのか、怪物なのか……。よくわからないけど、先ほど申し上げたとおり宮崎監督は疑問に答えないから(笑)。でも、ふわふわモコモコのキャラって世界共通でみんな大好きでしょ。だから謎のままでいいのかも」
10年ぶりの宮崎駿監督作品として昨年公開された『君たちはどう生きるか』は、実は国内の興行成績はさほどふるわず。『もののけ姫』(1997年)から続く、興行収入100億円超えの達成には至らなかった。ところが、中国、アメリカ、韓国などでは爆発的ヒットとなり、海外興行収入だけで2億ドル超えを達成。世界の注目度の高さが改めて証明された。
景気が落ち込み、「#日本終了」がトレンド入りするなど閉塞感が漂う中、世界での日本アニメ市場は2兆円に達したといわれる。かつて高度経済成長期の日本を支えた自動車産業、家電産業のように、日本アニメが経済を牽引する存在となる日は遠くなさそうだ。
取材・文/植木淳子