第一印象は、目力がすごい子だなって思いました。無口でしたが、この子には何かありそうだと思って、デモテープを録ることにしたんです

 中山さんは、中森明菜の『スローモーション』を選んで歌い、福住氏は、その姿に圧倒されたという。

とにかく歌っている表情が素晴らしくよかった。声に透明感があり、言葉がすごくキレイに聞こえたんです。まだレッスンとかやっているわけじゃないのに、いい感じだなって。なにより発散する圧力が違う。人は、それをオーラと呼ぶのでしょうが、美穂さんは、それがすごく強い人でした」(福住氏、以下同)

 魅了された福住氏は、社内で中山さんを猛烈にプッシュしたが反対される。

「キングレコードは、アイドルというジャンルに経験がなかった。先輩スタッフからは“やめておいたほうがいい、考え直せ”と、かなり反対されました。けれど、若造だった私は余計に燃えて(笑)」

デビュー前に「私、頑張りますから」

1989年、『VirginEyes』を熱唱する中山美穂さん
1989年、『VirginEyes』を熱唱する中山美穂さん
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 多くが、その可能性を否定したが、事態は一変する。1985年、中山さんの女優デビュー作となったTBS系ドラマ『毎度おさわがせします』の第1話が放送された翌日のことだった。

「さまざまな出演オファーが届き、電話が鳴りやまないんです」(前出・山中氏)

 周囲から否定されても、それを支えてくれる多くの大人がいた。そんな後押しを感じていたのか、中山さんは懸命に走り続けたという。

 キングレコードで中山さんの宣伝担当をしていた竹中善郎氏は当時、彼女が語った言葉が忘れられないでいる。

デビュー前に“私、頑張りますから”って、私の目を真っすぐ見て言ったんです。その言葉どおり、美穂さんは本当にひたむきなんですよ。なんでも一生懸命やる。どんなに忙しくても弱音を吐かないし、熱が出ても休まない。口数の少ない子だから、自分から頑張っているなんて言わないけれど、伝わってくる。私も含め、みんなそういう彼女の姿に惹かれていきました」