俳優として36年のキャリアを持つ、鶴田真由。昨年に念願の朝ドラ初出演を果たした一方で、写真集の出版やエッセイの執筆など、枠にとらわれず活躍の幅を広げている。
12月8日から放送がスタートした『誰かがこの町で』では、弁護士役に挑戦!ドラマの裏話や、心と身体の美しさを保つ習慣を聞いた。
現場で“焼きいも”、共演者となごみ時間
「江口洋介さんとは、実は今までほとんど共演したことがなかったんです。今回ご一緒して、良い意味で何事にもとらわれない、すてきな方だなあと」
そう話すのは、俳優の鶴田真由。'23年放送の『らんまん』で念願の朝ドラ初出演、印刷所の女将(おかみ)で江戸っ子の大畑イチ役を演じたのも記憶に新しい。
'88年にデビュー後、月9『妹よ』、織田裕二と共演した『正義は勝つ』など、'90年代のトレンディードラマに次々と出演。その後も映画、舞台など多方面で活躍している。そんな鶴田の最新出演作がWOWOWの『連続ドラマW 誰かがこの町で』。
役どころは、主演・江口洋介の上司であり、弁護士で法律事務所を営む岩田喜久子。トレンディードラマの常連だった江口と鶴田だが、がっつり共演するのは意外にもこれが初だ。
「シリアスなシーンが多かったのですが、座長の江口さんが常に現場をなごませてくれました。けれど、本番前になると、ものすごい集中力でパッと切り替えられるので、さすがだなあと思いましたね」
原作は、江戸川乱歩賞受賞作家である佐野広実の同名小説。とある新興住宅地を舞台に、住民たちの間に渦巻く同調圧力と忖度(そんたく)が引き起こす底知れぬ恐怖を描く。
「自分を捨てていなくなった家族を捜してほしい」という少女・望月麻希(蒔田彩珠)が喜久子(鶴田)のもとを訪れたことをきっかけに、法律事務所調査員の真崎雄一(江口)と麻希は、町の真実に迫っていく。
かつて町で起こった誘拐殺人事件と麻希の家族の失踪にはどんな関係があるのか。目を離せない衝撃的な展開が見どころだ。
「過去と現在のエピソードが折り重なった巧みな脚本が、とにかく面白くて。人間の同調意識や忖度が間違った方向に行ったときに浮かび上がる怖さに震えました。
傍(はた)から見ればそんなことしないだろうということも、閉鎖的な集団の中にいたら絶対しないとは言い切れない。もし私がこの町に住むことになっても、すぐ違う場所に移ると思います(笑)。第一印象で何か違うと思ったら、とりあえず離れる、がわたしの処世術かもしれません」
物語が進むにつれ、登場人物たちが背負う過去が明らかになる。
「それぞれが抱えて生きてきた“消せないシミ”みたいなものに向き合っていくというのが大きなテーマだと思っています。見る人それぞれが共感できる種がたくさんちりばめられているのも見どころです」
作風とは裏腹に、撮影現場は和気あいあいとした雰囲気だったという。
「ロケで使った古民家に薪(まき)ストーブがあったんですが、江口さんがさつまいもを持ってきて焼きいもを作ってくれました。そうしたら、次の日はでんでんさんもストーブで焼こうって食材を持ってきてくれて。なごやかな良い現場でしたね」