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ー 「一歩間違うと下品」
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ー 中山さんの“引き際”

 

《彼女が受けている理由は、きっとそのあやうさにある》

 “彼女”とは、12月6日に急逝した中山美穂さん(享年54)のこと。そう綴っているのは、『蒲田行進曲』『熱海殺人事件』などで知られる劇作家・演出家のつかこうへいさん('10年没)。つかさんは'95年に『女優になるための36章』(主婦と生活社)という書籍を発表している。同書は、つかさんが女優との出会いやふれあいを語りながら、女優とは何なのか。女優にとって大切なものは。そして彼女らの魅力を語ったエッセイ。タイトルにあるように36章にわたって個々人を取り上げつつ、女優・タレントらを語っているが、そのうち2章が中山さんに割かれている。

「一歩間違うと下品」

 出版当時の'95年は、中山さんが岩井俊二監督の映画『Love Letter』に主演した年。同作で中山さんはその年の映画賞の主演女優賞を総なめ。前年にはTBS系ドラマ『もしも願いが叶うなら』に主演。主題歌の『ただ泣きたくなるの』が104万枚のミリオンセラー。中山さん単独名義では初ミリオンとなった。そんな彼女の“全盛期”の魅力は、稀代の劇作家の目にどう映っていたのか。

 “そのあやうさ”とは─。つかさんは次のように綴っていた。

《自然に構えているだけで、表情をつくったときよりも効果的な、それでいて厭味のない強烈な印象を与えられるというのは、観られる商売をする者にとって貴重な才能》

《また派手な顔立ちだけに、一歩間違うと下品な感じに映ってしまいますが、彼女から漂う雰囲気は非常に上品なものです》